第三章
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「言えないんだがな」
「連中は勝手に言ってるだけですか」
「ああ、勉強は出来るかも知れないが」
「それでもですね」
「馬鹿なんだろうな」
今京大で騒いでいる彼等はというのだ。
「現実がわかっていないな」
「勉強は出来ても頭が悪いってことですか」
「東大の連中もな」
そこで騒いでいる彼等もというのだ。
「そうなんだろ」
「相当受験勉強してきたんじゃ」
「頭のいい馬鹿だな」
「勉強だけ出来て」
「現実のことは知らないし他人の考えもわからない」
「そんな連中ですか」
「ああ、だからな」
「ああした連中はですか」
「気にしなくていいだろ、そのうち目が覚めて自分を恥ずかしく思うかな」
「若しあのままだったな」
「テロやって捕まるか」
それこそというのだ。
「大学に残って馬鹿なことを言う先生になるか」
「どれにしても碌なものじゃないですね」
「そうだな、そんな連中よりもな」
「俺達の方がですか」
「世の役に立ってるだろ」
こうも言う荒岩だった。
「少なくともああして騒いでないしテロもしないだろ」
「そんな暇あったら働いてますね」
「勤労は美徳だろ」
二宮尊徳の言葉だった、荒岩が今出したのは。
「俺達はちゃんと働いてるからな」
「だからですね」
「あの連中よりずっとましだ」
「そうですか」
「ああ、じゃあ車が動いたらな」
「次の外回りの場所にですね」
「行こうな」
こう言ってだ、荒岩は田中と共に信号が動くとその外回り先に向かった。もう学生運動の者達は見ていなかった。
やがて田中も荒岩も長い間働いているうちに家庭を持ち仕事の中で出世もしていった。外見は二人共あまり変わっていなかったが。
九十年代に入ると田中は課長になっていて荒岩は部長補佐になっていた、その田中が荒岩に行ってきた。
「何か最近漫画読んでたら」
「どうしたんだ?」
「いえ、何かですね」
首を傾げさせつつだ、田中は荒岩と共に会社の近くの食堂で飯を食いつつ話した。二人共コロッケ定食を食べている。
「日本のアジア再侵略とか経済侵略とか」
「ああ、そんなことを言ってたんだな」
「漫画で時々そんなこと言う奴いますね」
「原作者やら編集がそうなんだろうな」
荒岩は田中に冷静に答えた。
「学生運動の残党でな」
「その連中が就職してですか」
「そうした考えでな」
「漫画に出てるんですね」
「そうなんだろ」
こう田中に話した、自分のコロッケにソースをかけつつ。
「それがな」
「連中サラリーマンが主人公の漫画描いても」
それでもと言う田中だった。
「こんなの普通に言ってますね」
「どっかの左翼政党かその流れの学者みたいなな」
「そんな風ですと」
「こんな馬鹿言う奴そうそういないで
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