第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「結婚を申し出るよ」
「左様ですか、旦那様でしたら」
「彼女でなくてもだね」
「他にいい方がおられるのでは」
「お見合いなりだね」
「日本風に」
この国を話に出すオリバーだった。
「そうされるなりご友人から紹介してもらうなりして」
「結婚するにしてもだね」
「様々な方法があると思いますが」
「そうだね、しかしね」
「キャサリン嬢がですね」
「あんないい娘はいないから」
だからだというのだ。
「僕は絶対にだよ」
「キャサリン嬢にですか」
「うん、今日も言うよ」
「そうですか、昔の我が国のならわしでは」
「あれだね、主が使用人を愛人にしてもだね」
「いいというものがありましたが」
古代ローマの法に倣ったと言われている、日本でよくあるメイドのそうした話もあながち創作ではなかったのかも知れない。
「旦那様は」
「僕はそんなことは好きじゃないから」
「交際されるならですか」
「一人でね、しかもね」
「家の使用人にもですね」
「そんなことはしないよ」
そこは絶対にというのだ。
「女性にも紳士でないと」
「誰に対してもですか」
「そう、だからね」
「愛人を持たれず」
「キャサリン嬢に対してもね」
家のメイドである彼女にもというのだ。
「あくまでね」
「告白を続けられて」
「そう、何度断られても」
それでもというのだ。
「僕はアタックをしていくよ」
「そうですか、ですが」
オリバーは主に端正な態度で答えた。
「キャサリン嬢はおそらく」
「僕の告白をだね」
「今は受けられないと思います」
「今は?」
「はい、今は」
こう言うのだった。
「そう思います」
「何故今なんだい?」
「仕事ですから」
だからだとだ、オリバーはリチャードに答えた。
「ですから」
「いや、プライベートの時に誘いをかけてもだよ」
キャサリンが働いていない時もというのだ、屋敷に住み込みで働いているが休日で外出しようとする時にも呼び止めて告白したことがあるのだ。
「それでもだよ」
「断られたのですね」
「それで仕事だからというのは」
「そこはです」
「そこは?」
「旦那様には少しお分かりにならないことでしょうか」
こう主に言うのだった。
「どうしても」
「僕がわからない」
「はい、キャサリン嬢には譲れないものがあるのです」
「彼女を尊重しているつもりなんだけれどね」
こうしたことは弁えている、彼は家で雇っている者達にも経営している企業の社員達にも好待遇で福利厚生にも気を使っていることで知られている。所謂ホワイト企業の経営者として評判の人物なのだ。
「それでもかい」
「それとこれとは別でして」
「余計にわからないよ」
「そうですか、ではです」
「では
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ