第一章
[1/2]
[1]次 最後 [2]次話
契約の後は
マウントバッテン家は代々の資産家だが家には爵位はない、産業革命期から出た家だが初代が言った方針をそのまま守って爵位は辞退し続けているのだ。
それでだ、十九世紀ビクトリア時代に建て替えてから今もその面影を残している見事な屋敷に住む当代のリチャードも爵位はなくイギリスでかなりの資産を持っていっても階級としては平民のままだった。
だがリチャードは笑ってだ、友人達に言っていた。
「お陰で結婚にも苦労しないよ」
「貴族としか結婚出来ないとかはない」
「そのことはいいというんだね」
「そして社交界だのに縛られない」
「貴族社会特有のしがらみからも自由だというんだね」
「そう、思えば貴族のしがらみを嫌ってだね」
そのせいでというのだ。
「初代も爵位を授からなかったんだよ」
「そして君もだね」
「代々爵位を辞退し続け」
「ナイトの称号を言われたそうだが」
「辞退したんだね」
「そう、だから叔父もね」
彼の父の弟である彼もというのだ。
「下院議員なんだよ」
「貴族でないからだね」
「それでだね」
「貴族院ではなく下院」
「そちらにいるんだね」
「そうさ、社交界には出入りしていてサロンも嫌いじゃない」
見れば仕草も品性がある、着ている服も上等なもので木造の趣のある部屋と家具そして上流階級出身の友人達とも釣り合っている。
「しかしね」
「爵位がないからだね」
「そちらへのしがらみはない」
「お陰で自由だ」
「そうだっていうんだね」
「自由は何よりも尊いものだよ」
蜂蜜色の髪を奇麗に整え栗色の見事な瞳を持つ顔でいう、彫のある面長の顔立ちで若く整ったものだ。背は一八〇を優に超えておりラグビーで鍛えている身体は実に逞しい。
「貴族になってしまうと」
「しがらみばかりで」
「どうにも自由がない」
「それで君の家は貴族にはならない」
「そうしていっているんだね」
「そう、平民もいいものだよ」
やはり笑って言うリチャードだった。
「名前も長々しくならないしね」
「ははは、爵位を持つとそうなるね」
「サーだのノーブルだの付くからね」
「何とか伯爵だのとね」
「すると書くのも大変だ」
「いちいち長々と書かなくて済む」
書類等にもというのだ。
「それだけでも違うよ」
「だからだね」
「君はそのままでいいんだね」
「君の家としては」
「平民のままで」
「そう、結婚にしても」
紅茶を飲みつつそちらの話もした、上等の葉のお茶でミルクティーである。友人達と共にティーセットを囲んでいる。
「自由だよ、いい相手なら誰でも選べる」
「ところが貴族はそうはいかない」
「家柄があるからね」
「しかし平民は違う」
「誰でもだね」
「そう、いい相
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ