第二章
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「あんな肥満した身体でいるんだよ、信者の人達は皆痩せていて」
「もうそこに出てますか」
「そう思うよ、僕は」
「あの教祖は完全な俗物ですか」
「欲全開のね」
こう言い切った斑鳩だった。
「そんな奴だよ」
「そんな奴がテロを起こしたんですね」
「自分のエゴの為にね」
「官公庁を狙って」
「そう、そしてね」
さらに言う彼だった。
「弁護士の人達もね」
「殺したんですね、攫って」
「自分達の悪事を追求していたからね」
「そう思うととんでもない奴ですね」
「あんなとんでもない奴が世の中にいるんだよ」
「そしてテロを起こした」
「そんな事件だよ」
岩崎に吐き捨てる様に言った、そのうえで自分の受け持っているクラスについての仕事をしていきそれは岩崎も同じだった。だがある日のことだ。
岩崎は食堂で食事を終えた昼休みに学校の図書館にこの日朝忙しく読みそびれていた新聞を読みに入って新聞を読んでから雑誌を読んでいて仰天した、そしてだ。
職員室に慌てて戻ってだ、朝食の妻が作ってくれた弁当を自分の机で食べた斑鳩に仰天した顔で言った。
「あの、さっき図書館で吉本隆明の発言読んだんですが」
「ああ、吉本隆明だね」
「はい、思想家の」
「あの人昔が凄かったんだよ」
斑鳩は弁当を収めつつ岩崎に言った。
「もう教祖みたいな感じでね」
「凄い評価受けてたんですか」
「そうだったんだよ」
「僕はただの思想家だと思ってました」
「だから昔はだよ」
かつてはという斑鳩だった。
「そう言われてたんだよ」
「そう言われていた、ですか」
「いや、僕も昔読んでみたがね」
「斑鳩先生もですか」
「そうさ、若い頃はね」
そうだったというのだ。
「これでも思想を学ねばって思っていてね」
「教師としてですが」
「インテリゲンチャを目指していたからね」
だからだとだ、斑鳩は岩崎に話した。
「それでだよ」
「あの人の本も読んでいましたか」
「ああ、しかしね」
吉本の本を読んだ、しかしというのだ。
「わからなかったんだよ」
「読んでもですか」
「何を書いているのか何を言いたいのかね」
「わからなかったんですか」
「さっぱりね。訳がわからなくてね」
「それで読むのを止めたんですか」
「学生時代大学の図書館で読んでね」
そうしてというのだ。
「読むのを止めたんだよ」
「そうだったんですか」
「そうだよ、それでも周りは持て囃してたね」
「戦後最大の思想家だってですか」
「もう教祖みたいにね」
そこまでの高い評価を受けていたというのだ。
「戦後日本の思想界は吉本隆明なしには語れないって言われる位にね」
「そうだったんですか」
「周りは言ってたよ、沢山の偉い学者さんや思想家さん達がね」
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