【籠の外の鳥】
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ュンチュン群がっている。
「こ、この子達がヒアシ様に慣れていないだけですよ。私に慣れているのは、それなりに長い期間餌を与えているので──」
「いや、良いのだ。……弟のヒザシもよく、小鳥達に餌を与えていて懐かれていたな。私も時折与えはしたが、そこまで懐かれはしなかった」
「…………」
ヒアシの口から父の名を耳にし、ネジはどう反応すればいいか分からず目を伏せる。
──自分がまだ幼かった頃、父が小鳥達によく餌を与えていたのは今でも鮮明にネジは覚えていて、短い間だったが一緒に小鳥達に餌を与えたのもちゃんと覚えている。
だからこそ、父を失った後も寂しさを紛らわすように小鳥達に餌を与えてきた。
亡くなった父を想い、静かに涙しながら小鳥達に餌を与えていると、一羽の小鳥が慰めるように肩に乗ってきて耳を優しくつついてくれる事もあった。
……そうしているうちにネジはすっかり小鳥達に懐かれ、ネジ自身も小鳥達に癒されてきたのだった。
「──籠の中の鳥を意味する、日向の呪印」
ヒアシがふと、重々しくそれを口にした為ネジはハッとして顔を上げる。
「宗家の眼を守る為の、分家の犠牲はもうやめにしなければならない。……呪印制度が無くとも、日向一族を守ってゆけるように」
ヒアシは自らに言い聴かせるように、手のひらの減らない鳥の餌を見つめながら静かに述べた。
「今すぐには無理だとしても、旧い慣習は断ち切らねばなるまい。宗家でなければ、日向の当主になる資格がない訳は無いのだ。分家であろうとも、日向の才に最も愛された者が次期当主に相応しい」
「───・・・」
ヒアシは真っ直ぐ甥を見つめ、ネジは複雑な面持ちで伯父を見つめ返す。
「……その表情、ヒザシに似てきたな」
「そう、でしょうか」
ネジはヒアシからふと目を逸らす。
……ネジから見ても、今の伯父は父ヒザシの面影を強く映していた。
そして小鳥達は不意に飛び立ち、彼方の空へ見えなくなった。
「……寧ろお前を日向に縛り付けるのは、良くないのかもしれぬ。ネジよ、お前が望むならいつかあの鳥達のように生きて自由に──」
「ヒアシ様。私は……俺は、日向一族としての誇りを持っている。いつの日か、それが許されるのであれば俺は──・・・いや、当主としての立場でなくとも、俺は日向の家族や里の仲間達を、守り続けて行きたいと思っています」
片手を胸元に当て微笑みを浮かべ、心からそう述べるネジにヒアシは感銘を受けると共に、一抹の不安も同時に覚える。
「死して自由になるような事だけは、してくれるなよネジ。お前はヒザシの分まで、生きなければならないのだから」
「それくらい、判っていますよ。……俺は
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