暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第258話 心に届く想い
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る? わたしが中1、レイが小6の時のお盆の事。戸尾さんと母さん、それに兄さんは京都に行っちゃったけど、わたしたちはどうしても宮城に行きたいって言い張って、2人で宮城まで行っちゃった時の事」
「………覚えてるわ」
「あの時ね、レイはずっとあの場所が好きで、あの風景の全部が好きで、2人きりの電車の中で、バスの中でずっとその話をしてた。お祖母ちゃんやお祖父ちゃんに会うのも楽しみだーって。……でもね、わたし、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに謝ったんだ。お母さんがお墓参りに来られなくてごめんなさい、って。お祖父ちゃんにしっかりお姉ちゃんしてるね、って褒められて……嬉しかったりもして」
「っ……。あの時は、結城の本家でどうしても出なきゃいけない法事があったから……」
「ううん。責めてる訳じゃないのよ。だってね……お祖父ちゃんたち、私の事褒めるだけじゃなくて、謝った後。茶箪笥から分厚いアルバムを持ってきてくれて、中身みてすっごく驚いたんだ。―――母さんの最初の論文から始まって、色んな雑誌に寄稿した文章や、インタビュー記事が全部ファイリングされてたから。ネットに乗ってたやつまでプリントしてたよ。……2人ともぜんぜんパソコンなんて判らなかっただろうにね」
「……………」

 ここで、少しだけ会話が途切れた。
 雪の積もる景色の中で、子ウサギがそっと巣穴から飛び出してくるのが見えたんだ。そんな子ウサギを追う様にもう一匹出てきて…… それでこっちだよ、って言ってる様にまた巣穴へと連れて行った。きっと、その中では家族団らんをしているんだろう、って想像が出来た。
 それを見送った後、アスナは続けた。

「それで、わたしにはそのアルバムを見せてくれながら、お祖父ちゃんは言ったわ。母さんは、自分達の宝物なんだって。村から大学に進んで、学者になって、雑誌にたくさん寄稿して、どんどん立派になるのが凄く嬉しいんだって。論文や学会で忙しいんだから、お盆に変えれなくても当たり前だし、それを不満に思った事は一度もない……って……」

 アスナの言葉に京子はただただじっと盛を見つめながら聞いていた。その横顔には、何の表情も浮かんでいない様に見えるが、それでも懸命に口を動かし続けた。

「そのあと、お祖父ちゃん。こう付け加えたの。――でも、母さんもいつかは疲れて、立ち止まりたくなる時が来るかもしれない。いつか後ろを振り返って、自分の来た道を確かめたくなるかもしれない。その時の為に、自分達はここをずっと……この家をずっと守っていくんだよ、って。……もし、母さんが支えを欲しくなった時に、帰って来られる場所があるんだよって、行ってやるために。ずっとずっと家と山を守り続けていくんだ、って」

 いいながら脳裏には魔はもう存在しない祖父母の家の情景が今一度蘇ってきた。そしてそれと重な
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