第二十五幕:蒸気と舞う虹
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っくりと流れ始めた。
イベント会場までは列車で一駅だ、俺がこの街に来た方向とは逆方向になるので、初めて見る車窓の景色を眺めておく。七夏ちゃんは小説を読み始め、凪咲さんはイベント案内状を眺めている。列車内で殆ど話をしないのは周囲への配慮なのだろうか。
車窓を眺めていると急に暗くなった。列車がトンネルに入ったようだ。窓にはっきりと映って見えるようになった七夏ちゃんと凪咲さんを、そのまま眺めていると、耳に少し圧力を感じる。列車は勾配を登っているようだ。
時崎「結構長いトンネルだな」
俺のつぶやきに、凪咲さんが答えてくれた。
凪咲「新線は、景色が楽しめなくなってしまったから」
時崎「新線!?」
凪咲「ええ。以前は、山沿いに列車が走っていたのよ」
時崎「そうなのですか?」
凪咲「時間と景色、柚樹くんは、どちらをとるかしら?」
時崎「今は、景色ですね」
凪咲「そう♪ 良かったわ♪」
時崎「旧線からの景色も見てみたかったです」
凪咲「見れると思うわ♪」
主 「え!?」
凪咲さんは窓の方を眺める。俺も凪咲さんに合わせる。真っ暗だった車窓がパッと明るくなり、大きな音が鳴り響く。列車がトンネルを越え、鉄橋に差しかかったようだ。急に眩しくなったので反射的に目を瞑ってしまう。
七夏「柚樹さん!」
小説を読んでいた七夏ちゃんが窓を指差す。その少し先に旧線と思われる鉄橋が見えた。その下は谷と渓流が広がっていて、絵葉書のような世界が飛び込んできた。
時崎「凄い景色だ」
七夏「くすっ☆」
なるほど、凪咲さんの「見れると思う」は、旧線の面影が新線にも受け継がれているのだなと思っていたら、再び景色が真っ暗になった。
その後も何度か黒い世界と眩しい世界が交互に訪れ、それに慣れてきた頃に車内放送が耳に届く。しかし、トンネル内に響くエンジン音が大きく、よく聞きとれない。
窓に映る七夏ちゃんが小説を閉じると同時に列車は減速を始めたのを感覚する。次いで明るい世界が車窓にゆっくりと広がった。
列車は隣街の駅に定刻どうり到着する。
凪咲さんと七夏ちゃんに付いて行く形で列車を降りる。いいひと時を分けてくれた列車に感謝を込めて撮影する。丁度、七夏ちゃんが此方に振り返ってくれたので、列車と一緒に記録した。
七夏「柚樹さん!?」
時崎「あ、ああ」
七夏「くすっ☆」
時崎「9時7分・・・」
七夏「え!?」
時崎「改めて正確に到着するなーって思ってね」
七夏「はい☆」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
イベント会場は、駅に隣接している。人もそれなりに居て賑やかだ。大きな建物とターンテーブル(転車台)が一際目立ち、存在感がある。それを囲むような扇型の建物、機関庫と機関車が目を引く。七夏ちゃんのお父さんは、機関庫
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