第85話 後始末は自分の手でつけるのが世の中の鉄則 その1
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無数のフラスコとビーカー。更に他にも何処か学校の理科の授業で見たような化学器具がズラリと並んだデスクがせりあがって来た。
何だろう、嫌な予感がしてきたぞ。
銀時の額を冷汗が流れ落ちる。
「もう少し待っててくださいね。今イチゴの乳を採取しているところですので」
ん? 今こいつ何て言った。
『イチゴ』の『乳』を『採取』するだって!?
何を馬鹿な事を言ってるんだこいつは。と思った銀時の目の前に映ったのは、巨大な透明色のガラスケースに入れられたイチゴの山で、その下部には透明のホースが繋がれており、そのホースの辿った先には一杯の空のコップが置かれていた。
「ふむ、しかしこれは難題ですね。イチゴからどうやって乳を採取するのか? その方法が未だに解明出来ずにいるのです。ですがご安心下さいお父様。必ずこの難題を突破し、イチゴの出す乳をお父様にお届けして差し上げます」
自信満々に言ってたシュテルの顔には何時の間に装着したのか何処ぞのがり勉君が身に着けそうな丸眼鏡を掛けており、さもインテリ風に眼鏡の真ん中をくいっと押し上げて呟いていた。
そんなシュテルを見て、銀時は何て声を掛けてやれば良いのか心底困り果ててしまっていた。
多分、シュテルはイチゴ牛乳を根本的に誤解してしまっている。
そもそも、イチゴは乳など出さない。だって果物だもん!
だから、幾ら数を揃えて狭いガラスケースの中に押し込んだとしてもイチゴから乳など出る筈がない。精々痛んで腐ったイチゴ汁が溜まってグラスに注がれる位にしかならない。
無論、そんなの断じて飲みたくない。
「シュテル、ちょっと良いか?」
「はい、何でしょうか?」
「お前、イチゴ牛乳ってどうやって作るか知ってるか?」
「愚問ですね。その程度既にこの脳内に記憶済みです」
自慢気に眼鏡を抑えながら語るシュテル。だが、目の前で行われている光景を見る限り何処か間違った考えをしている感がどうしても否めない。
「因みに、どうやて作ると思ってるんだ?」
「まず、イチゴを丸々太らせてから乳を搾る。これで新鮮なイチゴ牛乳が出来上がると、私は推測しています」
「うん、とりあえずその推測は却下の方針で行こうな」
やっぱりだった。やっぱりシュテルはイチゴ牛乳の作り方を激しく誤解している。
何でだよ! 部屋の内装弄繰り回したり新八の家を何処かの製薬企業が雇ったいかれた建築家が設計した屋敷以上のトラップハウスにしたり出来るのに、なんでたかだかイチゴ牛乳を作るってとこでそんな派手に躓くんだよ。
心底理解出来ないとしか言いようがない。
こいつ、もしかしてなのは以上に頭が良いのは確実なのだろうが、やっぱり何処か別の方向に知識が向いて行ってしまっている気がする。
だって、
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