巻ノ百三十四 寒い春その四
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「相模の北条家の様に暫し高野山にでも入るやも知れぬが」
「右大臣様が」
「そうなってもですな」
「暫くすれば許され」
「そうしてですな」
「許される、そしてその場合はじゃ」
豊臣家が大坂を出て幕府に従うならというのだ。
「我等浪人衆はどうなるかというとな」
「やはり大坂から出てですな」
そうしてとだ、大助が言ってきた。
「そのうえで」
「うむ、そうしてじゃ」
「元の浪人暮らしですな」
「そうなる、多くの者はな」
「やはりそうですか」
「幕府はそうした者達を百姓や町人にさせるわ」
浪人達はというのだ。
「多くはな、そして後藤殿や長曾我部殿はな」
「召し抱えられますか」
「幕府にな、石高は小さくともじゃ」
それでもというのだ・
「後藤殿や長曾我部殿ならば大名にも取り立ててもらえよう」
「そうなりますか」
「そして拙者も望めばな」
他ならぬ幸村自身がというのだ。
「その時はじゃ」
「大名にですな」
「返り咲くことも出来る」
「では」
「しかしお主達はどうじゃ」
幸村は服の袖の中で腕を組んで大助と十勇士達に問うた。
「大名に返り咲く、幕府に従いたいか」
「それは」
「さて、どうでありましょうか」
「我等の主は殿お一人です」
「このことは変わりませぬが」
「しかしです」
「殿もそうでありましょう」
大助も十勇士達に幸村にあえて言葉を返した。
「幕府、徳川家にはです」
「どうも我等は従えませぬ」
「まつろわぬのでしょうか」
「そうした者達の様です」
「そうじゃ、拙者はどうも幕府の下にはいられぬ者」
ここでこう言った幸村だった。
「どうしてもな、そうした運命らしいわ」
「ではですな」
「幕府には従わずですな」
「豊臣家が幕府に降れば」
「それで右大臣様のお命が護られるならば」
「もう戦うこともない、それでじゃ」
それ故にというのだ。
「拙者はお主達と共に何処かに行こうか」
「ならばです」
ここでまた大助が言ってきた。
「本朝を後にして」
「そうしてじゃな」
「何処か別の国に行きますか」
「海に出てな」
「そうしますか」
「それがよいであろうな、琉球にでも出てな」
そうしてとだ、幸村は大助に応え彼と十勇士達に話した。
「我等十二人風来坊として生きるか」
「風の赴くままにですな」
「そうしてですな」
「旅をして暮らすか」
「のどかに狩りや漁をして暮らすかですな」
「田畑を耕してもいいですし」
「そうして暮らしてもよい」
幸村は我が子と家臣達に応えた。
「その時はな」
「ですな、特にです」
「我等は権勢や富貴に興味がありませぬ」
「ならばです」
「修行を続けて強くなるならです」
「何処でもいいですから」
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