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102部分:イドゥンの杯その八
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イドゥンの杯その八

「最新鋭艦か」
「そうです。それも銀河に七隻しかない」
「ふむ」
「そのうちを一隻を贈らせて頂きますが」
「一つ聞きたいことがある」
 トリスタンは静かな物腰で彼に尋ねた。
「はい」
「それは私が帝国に敵対する道を選んだからこその贈り物だとは思うが」
「その通りですが」
「問題はその艦だ。一体どの様な戦艦なのだ?」
「ザックス級です」
「ザックス級」
「ローエングリン=フォン=ブラバント司令の乗っておられる艦ですが」
「彼がか」
「はい。こう言えばおわかりだと思いますが」
「確か生体コンピューターを使いかなりの性能を誇っているそうだな」
「その通りです」
「それを贈ってくれるというのか」
「如何でしょうか」
「その申し出、喜んで受けよう」
 トリスタンは思慮深げな顔で述べた。
「だが。どうしえ卿がその艦を持っているのだ」
「それは私にもわからないのです」
「どういうことなのだ、それは」
「私には。記憶がないのです」
「記憶が!?」
 それは不思議な言葉であった。記憶がないとは。トリスタンはそれをいぶかしんだ。
「疑っておられますね」
「否定はしない」
 彼はそう返した。
「記憶がなくて。どうやって動いているのだ」
「何をすべきかはわかっているのです」
 パルジファルは答えた。
「帝国を倒せと。それだけは」
「そうなのか」
「そして帝国と戦う者達を助けることも。それが私のやらなければならないことだと。それはわかっているのです」
「そして動いているのか」
「はい」
 彼は頷いた。
「だからこそ私は今こうして貴方の前にいます」
「ふむ」
「その戦艦、どうかお使い下さい」
「帝国と戦う為に」
「そう、そして御自身の運命を歩まれるのです」
「運命!?」
 その言葉を聞きまた眉が動いた。
「私の。運命だと」
「そうです」
 パルジファルは言う。
「先程申し上げましたが私には記憶がありません」
 これは認めていた。認めたうえで言う。
「ですが。次第に記憶が蘇ってきているのです」
「そうなのか」
「それも宇宙が出来上がった頃から」
 パルジファルの心に広大な銀河が宿った。
「そしてそれから徐々に。太古からの記憶が蘇ってきているのです」
「その中に私の運命もあるというのか」
「貴方だけではありません」
 パルジファルは言った。
「私も。そして他の者達も」
「私も卿もその運命の中にいるのか」
「そうです、そしてその運命に従い帝国と戦う」
「それが私の運命なのだな」
「そうです、全ては」
 彼は言った。
「貴方と私、そして他の者達の運命なのです」
「私と卿の他にもいるのだな」
「七人の男達が見えます」
「七人か」

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