101部分:イドゥンの杯その七
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イドゥンの杯その七
「問題はあの黒竜か」
トリスタンはバイロイトを破壊した竜のことを考えていた。
「話に聞く防御能力、あれは」
何を使っているのか、それは彼だけがわかった。
「イドゥンの再生能力も使っているな。ならば」
その技術が何処から出たのかもわかっていた。
「クンドリー、その為に私に近付いたのか」
玉座に座りながら遠くを見据えていた。
「多くの者を害する為に。ならば私は卿を許しておくことは出来ない」
心の中で言った。
「必ず探し出し、竜もろとも倒す。必ずな」
それは科学者としての決意であった。彼は政治家として、そして科学者として帝国に反旗を翻していた。そして程なくして帝国に堂々と宣戦布告したのであった。
それからすぐのことであった。カレオールにおいて周辺の星系と外交交渉にあたっている彼の下に一人の男が尋ねて来た。
「誰だ、一体」
トリスタンは報告にやって来た部下に問うた。
「武器商人だということですが」
「我々の帝国に対する宣戦布告を聞いてやって来たのか」
「おそらくは。どうされますか」
「そうだな」
彼は少し考えてからその部下に答えた。
「会おう。今は少しでも兵器が必要な時だ」
「わかりました。それでは」
「その商人の名前は何というのだ?」
彼は問うた。
「パルジファルと名乗っています」
「パルジファル」
「はい。パルジファル=モンサルヴァートと」
「わかった。では連れて来てくれ」
「わかりました」
こうしてパルジファルはトリスタンの下にやって来た。重苦しい鎧に似た服の黄色い髪の男が彼の前に姿を現わしたのであった。
「お初に御目にかかります」
彼はトリスタンの前に来ると恭しく一礼した。
「トリスタン=フォン=カレオール藩王陛下」
王者に対する礼であった。その礼から彼が礼儀をわきまえた人物であることがわかる。
「うむ、こちらこそ」
トリスタンはそれに対して客人に対する礼を返した。二人は今は対等、いやパルジファルの方が上だとしたのである。
「卿がパルジファル=モンサルヴァートだな」
「はい」
パルジファルは答えた。
「御存知でしたか」
「話は聞いている」
トリスタンは彼の顔を見て言った。だがその目は見えはしない。顔色も伺えない。
「帝国と。対立しているそうだな」
「はい」
パルジファルはこくりと頷いた。
「そして帝国と対立している者達を援助していると」
「その通りです」
「では私の下に来たのも」
「御力になる為に参りました」
「そうか、やはりな」
わかっていた。そのうえで出迎えたのである。
「では早速だが」
「はい」
「兵器を買いたいよいか」
「無論です。では戦艦及び巡洋艦を」
「他にも欲しい。空母や
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