第四章
[8]前話
「その前に退散するな」
「はい、それじゃあ」
春菜が応えてだ、そしてだった。
妖怪はレジから出て店からそそくさと出て行った、その妖怪と入れ替わりにその店長である佐藤千尋が長い髪の毛と大きな胸を振り立てて出て来た。
「やられたわ、今私しかいないのに」
「あの、アイスお願いします」
春菜はその千尋に注文を言った。
「二つ」
「はい、あと今のはね」
「のっぺらぼうですね」
「最近この辺りに出ててね」
「このお店にもですか」
「出るのよ」
そうしてきているというのだ。
「だからね」
「このことはですか」
「そう、気にしないで」
こう春菜に言うのだった。
「お店とは直接関係ないから、ただね」
「ただ?」
「妖怪も出るお店ってことは宣伝してるから」
「それってまずくないですか?」
翔太は千尋の言葉にどうかという顔になって返した。
「妖怪出るなら怖がって人が来ないですよ」
「出るって聞いて名前が売れて怖いもの見たさで人が来るの」
千尋はこう翔太に返した。
「だからいいのよ」
「そんなものですか」
「そう、それも宣伝よ」
店の売り上げの為のというのだ。
「だからいいの、じゃあそういうことでね」
「そういうことで?」
「いらっしゃいませ」
店の人間に戻る千尋だった、そうして二人のアイスの注文を受けるのだった。
春菜は翔太と共にアイスを買うことが出来た、それでだった。
翔太の手を帰る時も握り彼の家への帰路についていた、アイスは翔太が持っているがこの時にだった。
ふとだ、翔太は従姉にこう言った。
「呆気なかったよな」
「妖怪に会っても?」
「驚かなかったしな」
「そりゃ事前に何も聞いてなかったらね」
その時はとだ、春菜も答えた。
「私も驚いてたけれど」
「先に聞いてたからか」
「叔母さんにね、だからね」
「別に驚かなかったんだな」
「翔ちゃんもじゃない、私とお店に入る前にお話したでしょ」
「ああ、妖怪の話な」
「だからね」
それでというのだ。
「翔ちゃんも驚かなかったのよ」
「成程な」
「事前に聞いてたらね」
「驚かないんだな」
「何が出てもね」
その何かの話を先に聞いていればというのだ。
「そうしたものだよ」
「そうしたものか。じゃあまたな」
「あのお店に行ってね」
「のっぺらぼう観に行くのかよ」
「お買いものもしてね」
そしてとだ、そうしたことを話してだった。
二人で翔太の家に帰った、そのうえで彼の家でアイスを食べてだった。春菜は自分の家に帰った。帰る途中は妖怪は出て来なく無論変質者等も出なくて平和だった。
大阪ののっぺらぼう 完
2018・4・27
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