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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
マシュの心象風景U
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力によって辺りは焼かれ、燃え、砕け、崩壊していく。
 
 原初のルーンを用いた先制攻撃。
 それを放つは影の国の女王であるスカサハ。
 神代のルーンを扱うことができる彼女が放ったそれは予備動作無しとは思えない程の威力を秘めていた。 

 だがウィスに届くことはない。
 その全てがウィスの手前でせき止められているのだ。

 そう、ウィスの膨大なエネルギーが一種の壁となり、全てを防ぎ、遮断しているのである。

 スカサハは遠距離攻撃が効かないことを理解し、即座に直接攻撃へと移行した。
 一息に距離を詰め、その紅き朱槍をウィスへと振るう。





 だがまたしてもウィスには届かない。
 
 膨大な気によって創られた壁に阻まれ、スカサハの攻撃がウィス本人に届かないのだ。
 様子見を主体とした手を抜いた今のスカサハの攻撃では意味を成さない。

 ウィスは取るに足らないと言わんばかりにスカサハを鋭く射抜く。

 想像以上の強者の感触にスカサハは笑みを浮かべ、大きく後方へと後退する。
 これまで以上の速度と威力を込め、ウィスへと再び突貫するスカサハ。

 スカサハは朱槍を振るい、幾度もウィスに追撃する。
 振るう度に強く、速く、鋭い攻撃へと変化していく。


 




 やがてウィスが左手で防御の姿勢を取った。
 スカサハの朱槍を手でいなし、捌き、受け止める。

 漸くウィスがその気になったことにスカサハは笑みを深め、無意識に抑えていた身体のギアを急速に解いていった。



 遂に身体の全ての枷を解いたスカサハがウィスへと突貫する。
 その速度、身体に満ちる魔力、全てが先程とは別次元。

 ウィスもそんな彼女に応えるべく杖を構え、スカサハを迎え撃つ。
 2人が大きく激突したことにより生じた衝撃波が周囲に吹き荒れる。










─途端、眩いまでの光が影の国を照らし出し─










 一条の閃光が一人の男の肩を貫いた。


─…!?─

 声にならぬ悲鳴を上げ、無様に倒れ伏すは初老の男性。


─…。─


─ぎ…、貴様は…っ!?─


─貴方に名乗る名前などありませんよ。…ただ、あえて言わせてもらえばジャンヌ・ダルクという名に聞き覚えがありますよね?─


─ジャンヌ・ダルク…ッ!?─

 当然、聞き覚えがあるはずだ。
 何故ならこの男こそがジャンヌを処刑に陥れた張本人なのだから。


─忘れたとは言わせませんよ、ピエール・コーション?─

 知らないとは言わせない。
 こいつだけは許すつもりなど毛頭ないのだから。


─死の恐怖に震え、言葉も出ませんか?
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