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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
マシュの心象風景U
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う者です。しがない旅人に過ぎません─

 此処に彼女と戦いに来たわけではない。故にウィスはその意も込め、自身の素性を隠すとこなくスカサハへと正直に伝える。


─成程、ウイスと言うのか、お主は?─


─ええ─


─ふふっ…!。そうか、そうか…!─

 歓喜とも言える表情を浮かべるスカサハ。

 それと同時に膨れ上がる魔力と闘気。
 前髪に隠れ、彼女の表情を伺うことはできないが、口元には好戦的な笑みを浮かべていた。


─こちらに戦いの意志はありませんよ─


─感じるのだ、お主から迸る尋常ならざる力をな。お主の隙が一切感じられない佇まい、並みの鍛錬で得られるものではないだろう。私も長らく生きてきたがお主程の手練れに会うのは初めてだ。…ああ、駄目だ、自分を抑えられそうにない─


─…。─

 スカサハから放たれる予想外の言葉に固まるウィス。
 明らかに会話が成立していない。


─お主に戦いの意志がないことは分かっている。だが待ちに待った千載一遇の機会。悪いが私に付き合ってもらうぞ─


─…。─

 彼女はまるで何かに取り憑かれたかのように言葉を続ける。そしてウィスを因縁の相手と遭遇したかの如く見つめている。目は血を求めており、今にも襲いかかってきそうだ。


─ようやく出会えたのだ。己を殺してくれる可能性を秘めた存在に…─

 スカサハは完全に自分1人の世界に没頭してしまっていた。


─…。─

 ウィスは致し方無しとばかりにスカサハの求めに応え、戦闘態勢へと移行する。


─こうしてウィスとスカサハの両者が対峙した─

 両者は距離を置きながらも対峙し、視線を交錯させる。
 大気は2人の存在感に圧されることで震え、緊迫としたものになっていく。










─途端、マシュの眼前の景色が砕け散り、ウィスの記憶の欠片が散らばった─










─うー、ウィス…!─

 目じりに涙を浮かべるは幼き頃のジャンヌ。


─おやおや、どうしたんですか、ジャンヌ?─

 そんな彼女を安心させるようにウィスは優しく抱きしめている。


─…声が聴こえたのです─

 ジャンヌはポツリと胸の内に秘めた思いを吐露する。


─声、ですか?─


─はい、恐らくその声は主のものかと…─

 信仰者として喜ぶべき天啓の声に対してジャンヌは明らかに恐怖の色を見せる。


─…その自称"主"とやらはジャンヌに何と仰ったのですか?─

 ジャンヌの独白を聞き、ウィスは真剣な雰囲気を醸し出す。


─え…えっと…主は私に祖国であるフランスを救済せよとお仰せつかってい
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