第二章
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「神様だったり使いだったりするじゃない」
「まあそれはね」
「ほら、奈良県にもあるでしょ」
「三輪のあれね」
「あそこの神様蛇だし」
酒の神である、日本で蛇と酒に縁があるという考えはこの神からのものであろう。
「だからね」
「別に蛇といっても」
「そう、怖がることも気持ち悪がることもね」
「ないの」
「だからアクセサリーでもいいと思えば」
その時はというのだ。
「買うわ」
「そうしていくのね」
「蜘蛛だってそうよ」
今度はこの生きものの話をした。
「蜘蛛だって蠅とか食べてくれるじゃない」
「人の役に立っているから」
「だからなのね」
「そう、いいのよ」
こう言うのだった、祖母に対して。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、別に怖いとか気持ち悪いとか思わずに」
「そうした生きもののアクセサリーもなのね」
「勝っていくわ、そういえばね」
美優はふと気付いた風になってこんなことも言った。
「この前行きつけのお店でスカラベのペンダントあったわ」
「スカラベ?」
「フンコロガシよ」
名前だけで汚そうな虫の名前をだ、美優は祖母に話した。
「そのペンダントあったのよ」
「フンコロガシって」
「いやいや、これがね」
「これが?」
「凄くいいのよ」
そうしたアクセサリーだというのだ。
「古代エジプトで神聖なものって崇められていた」
「そうなの」
「復活とかをイメージしてるね」
「フンコロガシがそうなの」
「だからね、そのアクセサリーもね」
「今度買うの」
「バイト代が入ったらね」
その時はというのだ。
「買うわ」
「そうするの」
「ええ、絶対にね」
フンコロガシにも偏見のない美優だった、とかく彼女はそれが怖いだの気持ち悪いだの思われる様な生きものをモチーフとしているアクセサリーもいいと思えば買って身に着けていた。だが行きつけのアクセサリーショップでだ。
常連である彼女に店員が新しく入ったアクセサリーを紹介した時にだ、彼女は紹介してくれたもののうちの一つについてはこう言った。
「これだけはちょっと」
「買われませんか」
「はい」
そうすると言うのだった。
「他のものはお財布とも相談しつつですが」
「買うことをですね」
「考えさせてもらいますが」
それでもというのだ。
「それだけは」
「駄目ですか」
「はい、色やデザインはいいと思いますが」
それでもというのだ。
「それだけは」
「そうですか」
「私には無理です」
「そうですが、ですが」
店員は美優にこう答えた。
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