第二章
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「あの人がどうかしたの?」
「山田さんデメキン飼ってるらしいけれど」
「そうなの」
「最近身体の調子が悪くなったらしくて」
それでというのだ。
「もう世話をするのが辛くなってるらしいの」
「そうなの」
「ええ、だからね」
「ひょっとして」
「そのひょっとしてよ。あんた金魚好きだから」
「貰って欲しいの」
「そうお話されてたのよ」
これまで飼っていた金魚をというのだ。
「そうね」
「そうなのね」
「それでどう?」
母は食器を洗いつつ恵里佳に尋ねた。
「デメキンも飼う?」
「そうね、それじゃあね」
「まだ飼えるわよね」
「ええ、ちゃんとね」
水槽には今十匹の金魚がいる、だが水槽は大きくまだ十匹は充分に飼える位の余裕がある。それで恵里佳も答えたのだ。
「それだけの余裕があるわ」
「だったらね」
「ええ、じゃあそのデメキンね」
「あんたが譲り受けてくれるのね」
「そうさせてもらうわ。ただ山田さんそんなにお身体悪いの」
「何でも最近腰が痛くて」
「あっ、腰が痛いと」
どうかとだ、恵里佳もすぐにわかった。
「水槽持てないから」
「そうでしょ、あんた水槽すいすい持ってるけれど」
「腰が痛いとね」
「水槽盛ったり出来ないでしょ」
「お水も時々替えてね」
「水槽を洗うことも」
こちらのこともというのだ。
「どうしてもね」
「痛いと出来ないでしょ」
「だからなのね」
「山田さんもね」
「金魚飼えなくなったのね」
「それであんたにお願いしたいっていうの」
「わかったわ」
ここまで聞いてだ、恵里佳も頷いた。
「それじゃあ有り難くね」
「引き受けてくれるのね」
「そうさせてもらうわ」
恵里佳は母の言葉に頷いた、こうしてだった。
お隣の山田さんからデメキンを譲り受けた、そしてそのデメキンを水槽の中に入れたが姉達はデメキンを観て言うのだった。
「何かね」
「違和感あるわよね」
「他の金魚は普通の金魚なのに」
「鮒の形のね」
オーソドックスな金魚だというのだ。
「それでね」
「その中にデメキンが入るとね」
「目立つわね」
「一匹だけ違うから」
「そう?デメキンもね」
恵里佳は姉達のその言葉に落ち着いた顔で応えるだけだった。
「いいでしょ」
「いいの?」
「そうなの」
「ええ、私デメキンも好きよ」
こちらもというのだ。
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