第一章
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犬の心
今宮有紗は犬の心がわかる、それである日散歩に行く時に家の飼い犬であるワラビ、薄茶色の巻き毛で垂れ耳のブリアード犬の彼女を見てから母に言った。
「ワラビ何か急いでる感じするけれど」
「そうなの?」
「早く散歩に連れて行ってってね」
その様にというのだ。
「そんな気持ちみたいよ」
「よくそんなことわかるわね」
「だってね」
犬小屋から出ているワラビを見つつ犬小屋の近くにある鉢の手入れをしている母に対して言った言葉だ。
「顔がね」
「ワラビの顔を見てわかるの」
「ええ、何か雨が降るからって言ってるわ」
「雨って」
母は娘の言葉に空を見上げた。すると雲が殆どない奇麗な青空だ。
「このお空でなの」
「降るってね」
「そんな筈ないじゃない」
「まあワラビはそう言ってるし」
そのワラビを見つつ母にさらに話した。
「今からね」
「ワラビの散歩になのね」
「すぐに行ってくるわ」
「それじゃあね。けれどこのお天気でね」
それは有り得ないとだ、また言う母だった。
「降るのはね」
「ないと思うわよね」
「どうして降るのよ。天気予報でも降水確率ゼロパーセントよ」
降るとは全く言っていないというのだ。
「それで降るなんてね」
「私もそう思うけれどね」
「ワラビはそう言ってるのね」
「ええ、心の中でね」
犬だから当然人間の言葉を喋ることは出来ない、だがその顔を見ているとその考えがわかるというのだ。
「だからね」
「今から急いで行くのね」
「そうするわ」
こう言ってだ、有紗はワラビの首輪からチェーンを外してその代わりにリードを付けてうんこを入れるビニールも持ってだ。
そうして散歩に行った、ワラビは急ぎ足でいつもの散歩コースを歩いてトイレも何処か急いで済ませてだ。
そうして帰路についたが家が近くなるとだ。
急に天気が悪くなった、そして。
有紗がワラビの首にまたチェーンを付けてうんこを入れたビニールは家の外にあるごみ箱の中に入れて家の中に入るとだ。
雨が降ってきた、それでだった。
鉢の手入れを中断して家にはいってきた母が娘に言った。
「いや、本当にね」
「雨降ってきたわね」
「ええ」
その通りだとだ、母は娘に答えた。
「あんたが言った通りに、いえ」
「ワラビが言った通りにね」
「雨が降ったわね」
「本当にこうなるなんてね」
「やっぱりあれね」
ここでこう言った有紗だった。
「動物の直感は凄いわ」
「そうね、というかあんたって本当にね」
「ええ、ワラビの考えというか犬の考えがね」
「わかるの」
「その顔と目を見てるとね」
それでというのだ。
「わかるの」
「そうなのね」
「不思議とね」
自分でも
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