暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜白猫と黒蝶の即興曲〜
交わらない点:Point before#5
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る。思わず二の句が継げずに口を中途半端に半開きにしていると、

「なにが?」

横合いから不自然なほどに柔らかい声音が聞こえてきた。

そちらに目を向けると、食欲のカーニバルから脱したらしい幼女が、一転してどこか優しげな表情で少女を見ていた。

「あなたは何を訊きたいの?」

「――――大切な人が……彼が、やってはいけないことをしようとしてる。それを知っていて、私は何もできない。……私はどうすればいいの?ぶつかればいいの?逃げればいいの??」

「……………………」

「ねぇ、教えてよ……教えて……」

ぼんやりとして、ふらふらとした、迷子のような言葉の羅列。

だがそれに反して、その内容には並々ならぬ感情があるような気がした。いや、この場合並々ならぬというより、生々しいというべきか。

暴力よりも凶暴で、

冷酷よりも酷薄な。

剥き出しの、感情の発露。

それを直接向けられた訳ではないのにも拘らず、思わずたじろいだように愁眉を寄せるカグラに対し、マイは欠片も臆した様子もなく口を開いた。

「あなたはその人をどうしたいの?救いたいの?助けてあげたいの?」

「それは――――救い、たい」

「本当に?」

オウム返しのように即答されたその応えに、謎の少女は鼻白んだようだった。

対してマイは、どこまでも真っすぐに彼女を見ていた。

「誤解しないでね。あなたがその人のことを想っていないって言ってるわけじゃないんだよ。あなたはただ純粋に心配なだけ。何もできないと言いつつも、他人に助言を求めに行動を起こせるあなたが薄情なんてことは絶対にないんだよ」

「……っ」

少女の顔が一瞬歪む。それは親を見つけた迷子のようで、思わず手を差し伸べたくなるような何かがあった。

「だから、その上でもう一度聞くよ?あなたは、その人をどうしたいの?」

「ぅ…………」

「逃げたくはないんだよね。けど、ぶつかり合いたくもない。だってそれだと嫌われちゃうかもしれないから。その人が離れていっちゃうかもしれないから」

さっきまでとは別人――――どころではなかった。

柔らかで優しげな、どこか超然とした笑みを崩さずに、マイはそっと少女に手を伸ばした。

「分かるよ、分かる。マイ達は存在が不定形だから、どうしても《そこ》に自信が持てなくなるかも」

そこでマイは頭を巡らせ、こちらに「ね?」と話を振る。

むしろ目の前の少女が自分達と同じデータ体であるということに驚きの声を上げたかったのだが、その視線に押されるように巫女装束の麗人はカクンと首を縦に振った。

「――――その通りです。現実の肉体というものを持ち合わせない、そして絶対的な経験不足のせいで、我々は自分というパーソ
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