1st season
8th night
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「……このままじゃ、今の俺はあのR35になんか勝てやしない……」
愛車であるZ32を降り、その傍らで缶コーヒーを握りしめてへたり込む姿に、かつて雷光の疾風に対して叩きつけた自信はない。しかしその瞳にはどこか、燻るものを感じさせた。
「……これがslumpって奴か……クソッタレ……」
虚空に呟くその声を拾うものは誰もいない。しかしそれでも彼は、その胸の内からくるものを嘆かざるを得なかった。届かないと知っていても、吐き出さずにはいられなかった。そうしなければならないほど、彼は自分を知らず知らずのうちに追い込んでいた。
「……冗談じゃねぇ……どうすりゃいいのか、全くわからねぇ……」
「失礼、何かお困りのように見えますが」
へたり込んだ彼に声をかけたのは、黒いスーツに身を包んだビジネスマン風の少々くたびれた雰囲気を持つ青年だった。しかし、正当な勤務時間とは到底言えないこの時間にこの場所にいる、ただそれだけでグレーラビットから彼は異様に映った。
「……なんの用だ?」
「私はこういう者でね、今はわけが合って、知り合いの店を手伝っているのですよ」
とげとげしい視線を向けられても、平然と言葉を返し、名刺を取り出した青年の胆力は大したものと言えるだろう。名刺を受け取ったグレーラビットだが、視線の色を変えることなく切り返す。
「……もう一度聞こう。店の宣伝とかなら結構だ」
「おっと、これは手厳しい」
その鋭い視線を受けてか、一拍置いてから青年の表情から笑顔が消えた。
「この時間に走り回っている人達に、うちの車を乗ってもらおうっていうテストをしているんですよ」
「……普段なら何も聞かずに断るところだが、聞いておこう」
「オーケイ。ならついてきてください」
果たして、この男の目的たるや。
R4Aへの宣戦布告から三日後。旧首都高速、箱崎PA。
「ふぅ……大した賑わいだな」
柴崎は指定された時間よりかなり早く着いていた。普段ならC1やC2を攻める走り屋で賑わう箱崎PAだが、今日は一段の賑わいを見せている。
「それも当然か……まぁ、何でもいいけどね」
急に現れた実力派のチームがショップに宣戦布告。野次馬根性が湧くのも無理はない。彼は自身の集中力を高めるため、その賑わいとは少し離れた所に車を停め、車外で煙草を燻らす。
「あの……」
「うん?」
声をかけられたことに気がついた彼が振り向くと、2人の若者が近寄ってきた。
「その車、R4Aの柴崎さんですよね?」
「あぁ、チューニングショップR4Aの柴崎だ。君達は?」
「あっ、俺達Fine Racingの者です」
2人の視線の先には手堅くまとめられたインプレッサとランサーエボリュ
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