終極 ──明日へ──
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ない生き物です。故に未来ある明日へと繋げるために人は正しき道を求め、時には道を間違えようと定命という限られた時間の中で己にとって大切な者を見つけ、愛を知り、自分の人生を輝かしいものへと変えていきます。」
「終わりなき生は謂わば一種の呪いです。死という逃れられない運命に抗いながらも命有る限り前へ歩み続けること……。私はそこに人の無限の進化の可能性と輝きを見いだしました。それが4000年を超える年月を生きてきた私が導き出した答えです。」
ウィスの姿が次第に希薄なものになっていく。体の節々が粒子となり空気に溶け込み、ウィスと世界との誓約が解かれていく。
「私の役目はここまです。……これでゲーティアの不死性は失われました。立香、マシュ、……貴方達の旅路が最後には喜劇で終わることを心より祈っています。」
立香とマシュを見据え、微笑を浮かべるウィス。そこには自分が守りたかったかけがえのない人の輝きがあった。
マシュを支えた立香が現状を理解できず困惑した様子でこちらを見ている。ウィスはそんな2人から目を離し、崩壊に苦しんでいるゲーティアの方へと顔を向けた。
「……ゲーティア、貴方もいつか知るでしょう。この世界は悲劇ばかりではなく、それ以上に喜劇に溢れていることを。そして貴方が無価値だと見捨てたこの世界は美しく、人の無限の可能性の輝きは未来へと繋がっているのだと…。」
その布石ならば既に打ってある。
昏睡状態のマシュを支え、此方と呆然と見ている立香。彼らならば人理修復の旅を無事終えることができるだろう。ウィスはそう確信していた。
後悔はないが心残りならばある。
それは彼らの旅路を見届けることができないことだ。
だが心配は無用だろう。
彼らならばもう自分がいなくても大丈夫だ。
きっと彼らならば未来ある明日へと辿り着けるはずだ。
この世界に転生してから幾星霜。無限にも感じられる程の時間を生きてきた。
そこから繰り返される多くの出会いと決別。
最初は借り物の力とはいえこの力を用いれば英霊を救うことができると考えていた。
だがそんな幻想はまやかしで、自分は人類史の中立者であるのと同時に傍観者であった。
自身のこの力には数多の誓約と大幅な行動の制限が科されていたのだ。自分にできる唯一のことは彼らの運命への過程を変え、少しでも彼らの力になることだけ。
多くの嘆きを、悲劇を見た。
幾度も後悔し、自身の至らなさを嫌悪した。
いつもこの胸に残るは彼らを失った虚無感のみ。
自分だけは変わらず生き続け、この手に残るは彼らの冷たくなった体のみ。
幾度も、此度も、今回も─
結果は、
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