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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
|聖杯探索《グランドオーダー》開幕
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 マリーは絶望の表情を浮かべる。

 レイシフト適性が存在しないマリーは当然レイシフトを行うことは不可能。
 加えて現在魂のみの存在である彼女は魂を守護する役割を持つ肉体さえも有していない。

 だが心配には及ばない。

 言うまでもなくウィスはマリーの状態を誰よりも先に把握していた。当然、策も抜かりなく用意してある。

「そんなに悲観する必要はありませんよ、マリー?」
「…?」

 マリーが前を見ればいつもと変わらず微笑を受かべているウィスの姿が。

「私以前にマリーに言いましたよね?"困ったことがあれが遠慮なく相談してほしい"と?」
「でも、…私死んでしまっているのよ?こんなのどうしようもないじゃない…。」

 そう、マリーは既に死んでしまっている。
 例え聖杯であろうと完全な死者の蘇生は不可能な奇跡事象だ。

 誰よりも聡明である彼女だからこそ理解してしまう。
 否、理解せざるを得ない。
 自分はどうあっても助からないのだと。

 だが眼前のウィスは変わらず超然とした態度で此方を見据えている。

「既にカルデアを爆破した元凶は潰しました。そして今、この冬木へとレイシフトした全員が誰一人欠けることなくカルデアに帰還します。」




「そう、文字通りのハッピーエンドです。」
「…。」
 
 それは自分を除いた"全員"であるが。
 思わず自嘲の笑みをマリーは浮かべる。










「ですからマリーもいっそハッピーエンドになってはいかがですか?」
「…え…?」

 だがこの絶望としか言いようが状況でもウィスは笑う。










「ん──、ほい!」

 ウィスは微笑みながらその手に持つ杖を回転させた。
 途端、奇抜な装飾が施された杖に取り付けられた球体が淡く発光する。

 今なお呆然とするマリーへとウィスはその杖を振りかざした。







 途端、マリーの身体の全身を包むように青く発光する。

 マリーを包み込んだ光は瞬く間に消失し、その姿を虚空へと消え失せた。
 途端自身の身に押し寄せる生命の躍動。

「これでマリーの肉体は元通りです。」

 これで問題ないとばかりにウィスはあっけらかんと言う。

『ちょっと待ってくれ、ウィス!?君はまさかマリーを生き返らせたというのかい!?』

 信じられないとばかりにロマニは声を荒げた。

「ええ、その通りです。これでマリーは完全に蘇生され、この世に第二の生を得ました。」

 神にも勝る奇跡を軽く起こしたウィスはなおもその超然とした姿勢を崩さない。

 完全なる死者蘇生。
 万能の願望器と評される聖杯をもってしても不可能
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