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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
|聖杯探索《グランドオーダー》開幕
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その人を構成する全てではないのですから─

─マリーはこのカルデアの誰よりも努力をしています。マリーを陰で馬鹿にしているあのエゴの塊共と比べるまでもない程にね─

─私の言葉では説得力はないかもしれませんがマリーは頑張っていますよ。私が認めます。人類という大役を背負いながら誰でもできることではありません─

─ですからマリーは私の前では素のままでいていいんです。私は魔術師でも魔術協会の者ではないのですからね─

─何か困ったことがあれば遠慮なく言ってください。私で良ければ相談に乗りますよ─



 出会った当初からウイスは不思議な雰囲気を持つ青年であった。見た目にそぐわぬ達観さを有し、どこか掴みどころが無かった。

 最初の頃は距離感を掴みかねていた。だが次第にウィスと打ち解け、自分は頼るようになっていたのだ。

 そう、ウィスはあの殺伐としたカルデアで唯一の自身の心の拠り所だったのだ。


―ようやく自分を一人の少女として、"オルガマリー・アニムスフィア"として見てくれる人に出会えたのだ。こんな所で死にたくない。絶対に、絶対に死にたくない!!―


 故に彼女は生を強く渇望する。
 こんな所で死んでなどいられない。

 だが現実は残酷で、彼女に一歩、また一歩と死が近付いてきている。

 誰も彼女を、オルガマリー・アニムスフィアを救うことなどできはしない。それがこの世界の正史に刻まれ、世界に決められた彼女の運命。
 
「所長──!!」
「駄目ですっ!先輩っ!!」

 彼女を救おうと立香が駆け出そうとする。
 そんな彼の愚行を止めようと抱きつくマシュ。

 そう、彼は所詮唯の人間。
 人間である彼にできることなど何もありはしない。
 
「─。」

 だた一人、ウィスは目の前の光景を静観していた。

 自分は知っている。知っているのだ。

 彼女の頑張りを、必死さを。マスター適性とレイシフト適性を持たぬがゆえに裏で陰口を叩かれ、馬鹿にされながらも真摯に自身の職務を全うしようと取り組む彼女の姿を。



─これでは余りにも彼女が救われない。あんまりだ─



 彼女は決してこんな所で死ぬべき人間ではない。彼女は生きるべき人間だ。

 幸いにも体は動く(・・)
 自身を縛り付ける枷も世界からの干渉も存在しない。
 自らの意志で力を振るうことができる。

 ならば今此処ですべきことは決まっている。 



 次の瞬間、ウィスはその場から消えていた。







「いや──!っえ!?」

 マリーは絶叫の最中誰かに抱え上げられていることに気付く。

 恐怖で閉じていた瞳を恐る恐る開ければ、眼前にはウィスの姿が。


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