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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
|聖杯探索《グランドオーダー》開幕
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顔を曇らせる立香とマシュの2人。
 見ればマシュの肩に乗るキャスパリーグもどこか寂し気に尻尾を垂れ下げていた。

「そうかい…。」

 現状が好転していないことが分かり、ロマニは思わず嘆息する。

「特に酷いのがスカサハさんです。時間神殿から私達が帰還して以降まるで魂が抜け落ちたかのように虚空を見つめ続けています。呼びかけても上の空の状態です。他の方々は何とか立ち直ろうとしているのですが……。」

 マシュは自身の力の無さを嘆くように眉をひそめ、肩を落とす。右手の掌は今にも血が滴り落ちそうな程強く握りしめている。

「ウィス…。」

 声が震えるのを自覚しながらもロマニは言葉を絞り出す。

「彼女達にとってウィスさんは正に心の支えだったのでしょう。」
「フォウ…。(ウィス…。)」

 その場の全員が悲しげに表情を曇らせる。この事件の黒幕であるゲーティアは先程から沈黙を貫いていた。

 そう、このカルデアの精神的主柱的存在であったウィスはもういない。

 彼は常に傍観者であり、中立者。決してカルデアの命運を決める刻に力を振るうことはせず、静観していた。だが様々な誓約に縛せられながらもウィスはカルデアと立香達に手を貸してくれたのだ。

 ウィスは数多の特異点の時代にて出会った英霊達の生前にて知己関係にあり、その時代を文字通り生き続けた者。ウィスは人類史の運命を立香達に任せながらも常にカルデアに指標を示し続けた。

 悠久の時を生きるウィスのことだ。恐らくウィスは初めから人理崩壊を起こしたゲーティアの存在も、起こすに至った背景も全て知っていたのだろう。

 何故ならあれだけの頂上の力を有しているウィスが此度のゲーティアの暴動に気付かないはずがないからだ。神代から現代へ、文字通り数千年にも渡る悠久の時を生き続けたウィスが人類を破滅へと誘うゲーティアの陰謀に勘付かないはずがない。

 思えば人理崩壊に憤りを抱き、ソロモンに憎悪を向けていたカルデア職員とは異なりウィスは終始ゲーティアに対して見向きはすれど、憎悪することも、怒ることも、弾劾することも、責めることも、彼らの行いを否定することはしなかった。

 ただ彼らの存在と信念を受け止め、理解し、彼らに道を指し示した。崩壊を待つ存在であったゲーティアに第二の人生と機会を与えたのだ。

 推測の域を出ないがウィスは聖杯探索(グランドオーダー)が開幕する以前、否、遥か以前からゲーティアが未来において起こす人理崩壊を予見していたのだろう。

 そう考えなければ辻褄が合わないのだから。







─『終局特異点 冠位時間神殿』でのゲーティアとの死闘を終え、カルデアへと無事帰還したのはマスターである藤丸立香とマシュ・キリエライト、キャスパ
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