ペルソナ3
2022話
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手打ちしたのではなく、梨沙子がゆかりを平手打ちしたのだ。
大人しい性格をしている梨沙子だったが、それでも自分がすぐに男を乗り換えるという事を許す事は出来なかったのだろう。
もっとも、すぐにって言うが、ゆかりの父親が死んだエルゴ研の事故があったのは、10年近くも前の話だ。
そう考えれば、とてもではないがすぐとは表現出来ないと思うんだが。
まぁ、ゆかりの父親が死んでからすぐにその再婚相手と付き合い始めたのかもしれないが。
「何よ、本当の事を言われたのが悔しかったの?」
殴られた頬に触りもせず……それどころか、顔を動かしもせずにそう告げるゆかりの様子を見れば、どれだけゆかりが怒っているのかというのが分かるだろう。
それは、逆に言えばゆかりが梨沙子について色々と言いつつも、再婚はしないと、そう考えていたのかもしれないという事なのだろう。
「……そうね。手を上げてしまったのは、私も悪かったと思うわ。ごめんなさい。けど、これは信じて欲しいけど、私は決してあの人を……詠一朗さんを忘れた訳じゃないわ」
「それを信じろって言うの?」
鋭い視線を向けるゆかりに、梨沙子は辛そうな表情を浮かべて頷きを返す。
「そうよ。……詠一朗さんは今でも愛してるわ。けど……詠一朗さんは、もういないのよ。それは、ゆかりにも分かるでしょ?」
感情のままに叫ぶのではなく、言い聞かせるような話し方。
それを聞きながら、ゆかりは何かを言おうとするものの、結局言葉には出せない。
実際に詠一朗……ゆかりの父親が既に死んでいるというのは、紛れもない事実である以上、それに対して何かを言おうとしても出来ないのだろう。
これは俺の予想でしかないが、恐らくゆかりの父親がまだ普通に生きていれば、岳羽家は幸せな家庭を築いていた可能性が高い。
それが壊れたのは、やはり10年前に起きたという事故のせい、か。
「……あの男の人の事、本当に好きなの? お父さんの代わりだって思ってるだけじゃなくて?」
「ええ。それは間違いないわ。勿論詠一朗さんを嫌いになった訳じゃないけど、あの人も間違いなく愛してる」
愛してる、と。
その言葉を聞いたゆかりは、何故か不意に黙って話を聞いていた俺の方に視線を向ける。
そうして少しだけ潤んだ瞳で俺を見ると……やがて、しょうがないといった風に溜息を吐いてから、口を開く。
「そう。じゃあ、好きにすれば。お母さんが幸せになれるなら、それはそれでいいんじゃない?」
その言葉は、つい数秒前まで梨沙子の再婚に反対していたゆかりの口から出たものとは思えない程にあっさりとしたものだった。
近くで聞いていた俺も驚いたが、それよりも驚いたのは、当然のように梨沙子だろう。
自分の再婚について直接話す為
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