ターン89 鉄砲水と、覚悟
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でいる、それは間違いない。だけど彼女は、本当にそれを望んでいるのだろうか。違うかもしれない。皆の言うとおり、彼女をこの運命から解放するために戦うことが最善の行動なのかもしれない。
……でも。自分を強いて口を歪め、顔だけでもぐっと笑ってみせる。無理を通しさえすれば、道理は向こうから引っ込むのだ。
「僕を誰だと思ってるのさ。砂粒1つから水1滴まで、世界は全部このダークシグナー様の所有物なんだよ?僕を中心に宇宙は動いてるんだ、僕のやることは無条件で正しいに決まってるよ」
大それた言葉だと思う。だけど、これでいい。
要するにこれは、逆転の発想だ。世界を何もかも思い通りに動かしたいのなら、それができる存在になるしかない。逆に言えば僕こそがその存在だと言い張って周りがそれを信じれば、そんな僕の思い通りに世界の方が動く。世界を思い通りにできるから神なのではなく、神だからこそ世界はその意思に従う。そして僕はダークシグナー、いわば地縛神の神官だ。彼女の、夢想のためならば、どんな道理でもひっくり返して見せよう。僕にはそれだけの力があり、それだけの仲間がいる。多分。
そんな宣言にさすがのチャクチャルさんも二の句が継げず、少しの間黙りこむ。若干不安になってきたタイミングで、低く重々しい、抑えきれなくなったかのような笑い声が聞こえてきた。
『ククク……ハッハッハ!いいだろうマスター、その意気は気にいったぞ。そしてよくぞ言った、その根拠なき自信と果てなき欲望こそが人間で、それこそがダークシグナーだ。愚かで、傲慢で、救いようもなくて、そしてだからこそ素晴らしい。それこそが生というものだ』
言葉の端々から、チャクチャルさんの若干の驚きが含まれた歓喜の鼓動が伝わってくる。その一方で僕自身も、今の言葉を口にしたことで何かが吹っ切れたような気分を味わっていた。これまで自分自身を縛り付けていた何かが、すっと消えさったような。今ならば何でもできそうな、初めてダークシグナーになったあの時よりも遥かに上の高揚感が無限に溢れ出て、それが体の隅々にまで瞬時に行き渡る。だからだろうか、こんな突拍子もない、たとえ思いついたとしても検討することすら諦めるような案が閃いたのは。
「例えば、だけどさ。僕が夢想に勝てば、ダークネスにとって夢想はもう用済みになるわけだよね」
『その可能性は高いな。そもそもあの女を手駒に置いたのも、マスターの……引いてはマスターの中に遺されたその魂の名残を警戒してのことだろう。たとえ能力が劣ろうと、イレギュラー要素の無いミスターTだけで基本的な用は足りるからな。それでは不十分だと判断したからこそのあの女……となると、その仕事すら果たせない駒をわざわざ手元に置き続ける意味はないはずだ』
「そうすると、どうなるの?消えちゃうとか?」
『最終的
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