ターン89 鉄砲水と、覚悟
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ピペやクローンのレベルで増えるのだから、その親玉であるダークネスがそれぐらいのことやってのけないなんて保証はどこにもない。たちの悪い冗談どころか、普通に有り得る未来の仮定でしかない。
だいたい僕のせいで重く立ちこめてしまった沈黙を最初に振り払ったのは、三沢だった。
『……それで、清明。お前に行ってほしい地点なんだが、ずいぶんと半端な位置でな。本校からレッド寮に向かう道の、ちょうど中間地点あたり……と言えば、お前ならわかるな?』
ああ、と頷く。なにせ3年間ずっと通ってきた道だ、鮮明に頭に浮かぶ。それと同時に、三沢がそれを訝しむ気持ちもよくわかった。あの辺りは確か、本当に何の変哲もないただの道でしかなかったはず。なんでまた、ピンポイントでそんな場所を?
『その近くを抜けてコロッセオにたどり着いた生徒の証言を聞く限りでは、その近くにはミスターTも見当たらなかったらしい。先ほどはああ言いはしたが、正直なところ戦略上の重要度は正面入り口の方が上だと思う。だから悪いが、そっちにはお前1人で行ってもらいたい』
「わかったよ、こればっかりはしゃーないね」
『すまない。そしてクロノス先生ですが、すみませんが十代と入れ替わるかたちで俺をその車に乗せて発電施設まで連れて行ってください。賢者の石の力を借りて電気エネルギー、そして先ほどから何カ所かで行われているらしいデュエルによって発生して今もこの島を飛び交っているデュエルエナジーを増幅し、時間移動システムの仕上げにかかります』
「むむむ、責任重大なノーネ」
その口調は硬かった。でも、それも無理はない。なにせ今伝えられた三沢の作戦は何から何まで全部、この車がちゃんと動くことを前提として立てられている。成り行き上とはいえその運転手を務めることになったクロノス先生は、ある意味ではこのダークネス撃退作戦の要だ。
自分が何か下手をすれば、作戦全てが瓦解しかねない。そのプレッシャーがいかほどのものかは想像もつかないが、それでもそれを隠して極力普通に振る舞おうとするあたりはこのメンバー唯一の教師として、そして大人としての風格を感じさせる。
「じゃあこっちは任せてくれ、清明。必ず、後でまた会おうぜ」
「もちろん。賢者の石、確かに預けたからね」
十代の差し出した右拳に、こちらも拳を軽く合わせる。すぐにその手を放し、軽トラの助手席へと再び乗り込んでいく。向こうは引き返せばいいとして、僕はどっちに行けばいい?ここからレッド寮と本校の間だと……この場所なら、来た道をまた引き返すことにはならずに済むだろう。方角を確かめてから僕も僕の戦いに向かおうとしたところで、背後から鋭い声が飛ぶ。
「シニョール清明!」
声の主、クロノス先生がこちらを見ていた。再びエンジンが動き始めた軽トラの窓から顔
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