ターン89 鉄砲水と、覚悟
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は、トメさんがいつも使っていたものだ。よくエンストしては立ち往生して、道中押して動かすのを手伝った覚えがある。しょっちゅうエンストするだけあってかなり古い型みたいだし、そりゃあこんな森の中だと乗り心地は最悪だろう。
「あ、そうだ!ちょっと待ってろ、今三沢に連絡するからな」
そう言って自分のPDFを取り出し、少し画面をいじってからこちらに手渡してくる。コール音1回の後、液晶に親友の顔が浮かんだ。
『どうした、十代……いや、清明か!?』
「ハローハロー。悪かったね、後で話すけどこっちも色々あったのよこれが。でもほら、確かに賢者の石は採って来たよ」
ポケットにねじ込んでおいた小包を引っ張り出し、画面の向こうからも見えるように顔の近くで軽く振ってみせる。画面越しでもわかるほどに安どの色がその表情をかすめたのを見計らって、また小包をポケットに戻す。
「で?これから僕は、どうすれば?」
『今から説明する。その前にまず確認だが、十代とクロノス先生も今そこにいるんだよな?』
「おう、俺たちもいるぜ」
『ならよし。まず、清明の持っている賢者の石を持って1度俺のところまで来てくれ。それが終わったら十代、お前はそのままアカデミアの正面入り口に攻撃を頼む。特に大きな空間の歪みが2カ所確認された、恐らく藤原優介はそちらに出てくるはずだ』
「藤原、優介……」
その名を口にした瞬間、十代のデッキがかすかに光を放つ様子が見えた。彼が1枚引きぬいたそのデッキトップにあったカードは当然というかなんというか、E・HERO オネスティ・ネオス。傷つき力尽きたオネストの魂を託され新たな力を得た、もうひとつのネオスの姿だ。オネストはもともと藤原のカード、やはり主の名に反応したのだろう。
『そちらにはヨハンと……それから、さっきコロッセオから連絡があったんだが。どこで聞きつけたかは知らないが、どうも吹雪さんも単独でそちらに向かったらしい。あの付近ではミスターTも存在が確認されている、下手をするともうすでに交戦している可能性もあるから、なるべく急いでくれ』
「吹雪さんが……わかったぜ」
『それから清明。お前にはこれから、もう1か所の大きな歪みが観測された場所に向かって欲しい。お前にはさっきも話したと思うが、ダークネスの出現位置は2つまで特定ができた。だが、どうしてもそこから先を1か所に絞り込む決め手が見つからなくてな。藤原優介が陽動だった場合、ダークネスがもう片方の座標からこの次元に現れる可能性も否定できない』
「了解。まさかとは思うけど、ダークネスが分身して2カ所からいっぺんに出てくる……なんてことはないよね?」
冗談めかして言いはしたが、あいにく誰も笑わなかった。当然だ。なにせ、相手は闇そのものなのだから。尖兵のミスターTだってコ
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