第四十四話 二人でお外に出てその十七
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「嬉しいです」
「それは嬉しいわ、私もね」
私もお弁当箱を開きながら言いました、この量は私にとっては多過ぎる位なのが困りますが。
「お料理上手にならないとね」
「それで僕に食べさせてくれるんですね」
「何でそうなるのよ」
むっとしたお顔で言い返しました。
「いつもそう言って」
「駄目ですか?」
「阿波野君の為に作るってどういうことよ」
今日何度目でしょう、こうしたことを言うのは。
「結婚して子供が出来て」
「それで家族にですか」
「食べてもらうけれど」
それでもです。
「阿波野君にはね」
「ないですか」
「ないわよ」
このことは断りを入れました、それも強く。
「変なことばかり言うんだから」
「まあまあ、怒らないで下さいよ」
「怒ってないわよ、注意してるの」
能天気な態度が余計に頭にきます。
「いつもそんなのだから」
「怒ってると健康に悪いですよ」
「だから怒ってないわよ、とにかくね」
「はい、とにかくですね」
「お弁当食べましょう」
折角食べているからです。
「そこからまた別の商店街案内するから」
「一つの街に二つあるんですね、商店街」
「駅前ともう一つね」
こちらは八条グループの企業の本社が集まっている方にあります、どちらも繁盛しています。
「あるのよ」
「それでどっちの商店街も賑わってて」
「繁盛してるの」
「そういうの珍しいですね、今時」
阿波野君は商店街のお話になると少し寂しいお顔になります、それでいつもこんなことを言うのです。
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