巻ノ百三十三 堀埋めその九
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「降るしかない、そうなればな」
「大御所様はそれでも情をかけられますが」
「右大臣様のお命は助けようとされますが」
「そこでも何かあれば」
「そうなってしまえば」
「豊臣家は滅ぶ」
そうなってしまうというのだ。
「そしてそうした流れにしておるのがな」
「茶々様ですな」
「他ならぬあの方ですな」
「豊臣家を続けさせるおつもりが」
「滅ぼそうとしておるのですな」
「あの方こそが豊臣家を滅ぼしておる」
そうした状況だというのだ。
「この度のこともな」
「堀のこともですな」
「まんまと引っ掛かり」
「折角の大坂城も裸城にしてしまい」
「無残なものにしていますな」
「そうじゃ、そしてそれがわかっておられぬ」
茶々自身はそうだというのだ。
「何もわかっておられぬからな」
「どうして豊臣家が滅ぶのかも」
「ご自身のせいでもですな」
「それもわかっておられず」
「これからもですか」
「豊臣家を追い詰めていかれますか」
「そうじゃ、大納言様がおられれば」
秀長、彼がだ。
「茶々様も止められて右大臣様の後見をされてな」
「今の豊臣家はなかったですか」
「大坂の城もですな」
「この様にはなっていませんでしたな」
「あと少しで完全な裸城になりますが」
「そうなることもですな」
「なかったわ、とてもな」
残念そうに言う兼続だった、そしてだった。
兼続もまた大坂城の堀を埋め壁も石垣も櫓も壊していった、当然真田丸はとうの昔にそうなってしまっていて。
城は天守閣とその周りの建物、秀頼の御所やそういったものばかりとなっていて護りなぞなくなっていた。その有様を見てだった。
豊臣方で戦っていた浪人達は呆れ果てて忌々し気に話をした。
「この様な城になってどうせよというのじゃ」
「護りも何もないぞ」
「あの護りがなくなったわ」
「奇麗さっぱりとな」
「これで勝てるか」
「次戦になれば終わりじゃ」
「我等は敗れるわ」
そうなってしまうというのだ。
「そうなってしまうわ」
「それでは何の意味もないわ」
「負け戦なぞやってられるか」
「何たる馬鹿な話じゃ」
「おめおめと敵に彫を埋めさせるとは」
「この様な馬鹿な話聞いたこともないわ」
「その様な愚かなことをさせる総大将の下で戦っていられるか」
到底と話すのだった。
「また負けてしまうわ」
「もう既に負けておるわ」
「これ以上はな」
「冗談ではないわ」
「さっさと去った方が身の為じゃ」
「全くじゃ」
こう話して次々にだった。
浪人達は逃げていった、それを見て後藤は幸村に言った。
「これではな」
「はい、もうですな」
「浪人の数が減ってな」
「どれだけ減るかですな」
「六万を切るであろうな」
十万
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