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おぢばにおかえり
88部分:第十三話 詰所へその二
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第十三話 詰所へその二

「改築したのが少し前だから」
「いいですよね。私の詰所なんて」
「何言ってるのよ、奥華っていったら」
 ここで私のいる大教会の詰所について言われました。
「神殿から歩いてすぐだし商店街の側だし」
「場所。いいですか」
「凄くいいわよ。私なんていつも駅越えるのよ」
 歩けばかなりの距離です。天理市の商店街ってかなり長いですし。
「それ考えたら。羨ましいわ」
「羨ましいですか」
「子供の頃は本当にそう思っていたわ」
 先輩は岡山の方の教会の娘さんです。大教会は大阪の方にありますけれど。岡山にしろ兵庫にしろ広島にしろ美人さんが多いんでしょうか。
「いいなあ、って。おぢばがえりの時なんかも」
「おぢばがえりですか」
「おぢばの夏って滅茶苦茶暑いじゃない」
 盆地なので。私もそれは知っています。
「だから。神殿まで行くのに汗だくになっていたのよ」
「そんなに大変だったんですか」
「もう大変よ。冬だって」
 夏になってすぐに冬に。会話の中では季節の移り変わりは速いです。それこそあっという間です。
「お正月の寒い中を神殿までだったし」
「それでおせちのお雑煮を食べて」
「お父さんはおとそを飲んでね」
 お正月はおぢばでお雑煮とおとそが振舞われます。それが一年のはじまりなんです。
「それであったまるけれど。ただ修養科の人なんか大変よね」
「歩くだけでかなりですからね」
「だから神殿の側にある詰所の人が羨ましかったのよ」
 少し口を尖らせて仰います。
「いいなあ、って」
「そうだったんですか」
「けれど。それでもお家みたいなものだしね」
 先輩の表情がぱっと明るくなりました。
「だから中に入ればほっとするのよね」
「そうですよね。詰所って」
 そういえば私もそれはそうです。
「いたらやっぱり落ち着きますよね」
「馴染みの場所だしね」
 多分これが大きいんだと思います。いつも知っている人がいますしそれに子供の頃、いえ赤ちゃんの頃から通っていて泊まったりしていますから。だからだと思います。
「私も。あそこにはお腹の中にいる時からみたいだし」
「私もですよね。多分」
「お父さんとお母さんがね。結婚して私がお腹にいる時も帰っていたそうだから」
 こうしたことも普通にあります。私達と詰所の関係ってそこまで深いんです。
「それを考えたらやっぱりつながりは深いわよね」
「ええ。だから何だかんだで私詰所好きです」
 高校に入ってからもよくそこで集まったり二十六日の月次祭にはお父さんやお母さんと会ったりしています。本当に馴染みが深いです。
「先輩もやっぱりそうですよね」
「これで近ければ本当に最高なんだけれど」
「あっ、それはそうですか」
「ええ。やっぱりね」
 
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