ペルソナ3
2020話
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イクシールで回復してはいるのだが、病院としてはそれでもしっかりと検査をしているらしい。
正確には、イクシールの成分を少しでも分析出来ないかと、そんな風に考えているらしいが。
別にそれは構わない。病院にいる医者とはいえ、どちらかと言えば科学者的な一面も持っているのだ。
そういう者達にとって、制御剤の副作用も回復させることが出来るイクシールというのは、それこそ喉から手が出るほどに欲しい物なのだろうから。
ともあれ、そんな訳で順平は学園祭を十分以上に楽しんでいた。
そんな順平に焼きそばを詰めたパックを渡すと、再び別の人物に声を掛けられる。
「アルマー君」
声を掛けてきたのは、クラスメイトの女。
俺とはそんなに話した事はない相手だが、ゆかりと話している光景はそれなりに目にする。
「注文は何だ?」
「ううん。違うわ。交代の人が来たから、アルマー君はちょっと学園祭を見て回ってきたら? それに……ほら」
そう女が示す方にいたのは、ゆかり。
俺の方を見ていたのか、目が合うと少し照れくさそうな笑みを浮かべる。
「ゆかりを放っておく訳にもいかないでしょ?」
「それは……」
何かを言おうとしたが、交代要員としてやった来た女が俺に手を伸ばす。
「ほら、私が代わるから行ってきなよ」
そんな訳で、俺はゆかりと共に学園祭を回ることになる。
「ねぇ、向こうの方に鯛焼きを作ってる屋台があるらしいけど、行ってみる?」
「鯛焼き? また、難しそうなものを」
「難しいの?」
「取りあえず、俺は作れないな。作るにも専門の鉄板が必要になるし」
「ふーん……じゃあ……」
そう言ってゆかりが俺の手を引っ張った、その時……
「ゆかり」
その声が聞こえた瞬間、俺の手を握っていたゆかりがビクリと動きを止める。
この様子を見ると、間違いなく聞き覚えのある声だったのだろう。
そうしてゆかりは、後ろを振り向く。
どこか泣きたいのや怒り出したいのを我慢するようにしながら。
「……お母さん」
そう、一言だけ漏らして。
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