人狩りの夜 後日譚
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たおしてもたおしても次々と襲いくる魔獣の群れを前に、治癒魔術を使うひまはない。
そして一匹たおすたびに深傷が増える。
「【スリープ・サウンド】や【痺霧陣】などの非殺傷呪文で傷つけずに無力化すれば……。たがこちらにも効果がおよべば? 魔獣に囲まれた状況で体の自由や意識を失ってしまうことになれば――」
【ラピッド・ストリーム】などを駆使して、一気に離脱する手もある。だが、恐怖と痛みによって千々に乱れた心は冷静な判断と行動を遅らせた。
魔獣のあぎとが足首に食い込み、筋を噛みちぎり、引きずり倒す。
地面に倒れたカブリュの体に殺到する魔獣たち。
「こ、これが死か。これが死か、騎士爵! ぐわぁぁぁァァァッッッ――」
喉笛を引き裂かれ、数多の詩を詠んだ口からは大量の鮮血が噴水のように溢れた。
鋭い牙と爪に掻き切られた腹部から湯気の立つはらわたを引きずり出され、貪り喰われる。
吟遊詩人として名を馳せたカブリュ・バドール伯爵は辺境の荒野で生きたまま魔獣たちの餌食となり、その生涯に終止符がうたれた。
彼の本性を知る者は少なく、彼の死を知る者はいない。だが、彼の名声と遺した作品は世の人々の記憶に長く残るのであった。
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