人狩りの夜 後日譚
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できた。これは妙作が創れそうだ。それじゃあ、さようなら――《耀き太陽よ・地に墜ち・爆ぜよ》」
灼熱の炎が吹き上げ、爆炎の障壁と化してシャドウ・ウルフたちを飲み込んだ。
黒魔【フレア・クリフ】。自在に操作することが可能な炎の壁を生み出す【ファイア・ウォール】の上位呪文。
その炎熱温度は最高で一〇〇〇度に達する。
黒い毛並みが大気を焼き焦がす紅蓮の炎に焼かれ、数匹の魔獣が黒焦げの骸となり、肉が焦げる異臭があたりに満ちた。
「ぐわぁッ」
沸騰した熱湯を浴びせられたかのような激痛がカブリュの身を襲った。
痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い、痛、痛、痛、痛痛痛痛痛痛――。
カブリュの手足が、顔が、腹が、背中が、全身のいたるところが真っ赤に染まり、焼け爛れ、火膨れが生じた。
自身の放った【フレア・クリフ】に巻き込まれたわけでも、失敗して暴走したわけでもない。そのような下手を打つほどカブリュの技量は稚拙ではない。
では、なぜか?
なぜ、突如として火傷を負ったのか?
不測の事態に対する混乱、そして恐怖。
ここにきてはじめてカブリュの心に恐怖が生じた。
GAAAッッッ!
それに反応して一匹のシャドウ・ウルフが飛びかかる。
「《雷槍よ》!」
とっさに撃った【ライトニング・ピアス】が魔獣の頭部を撃ち抜くと同時に、カブリュのひたいを焼け火箸でえぐられたかのような激痛が走り、鮮血がしたたる。
「グギャァァァッ! 《雷槍よ》!」
苦痛に耐えて呪文を行使。
雷閃が魔獣たちの胴を貫き、四肢を断つ。
そのたびに、カブリュの肉体は傷つき、激しい痛みにさいなまれる。
「の、呪いか?」
ここにきて、ようやく自らの身に生じた異常の正体に思いあたった。
相手にあたえた痛みと傷が、おのれに反ってくるという呪い。
それが、秋芳のかけた【カース】の内容。
「だ、だかすべてのダメージがそのまま反ってくるというわけじゃない。それなら最初の【フレア・クリフ】で私も黒焦げになっていたところだし、【ライトニング・ピアス】で頭を貫かれて即死していたところだ。決して一撃で死なぬよう、致命傷にはならないよう加減が生じる」
即死級のダメージをあたえても、それがそのまま反ってはこない。だが、深傷と呼んでもさしつかえないほどのけがをする。
「は、ははははっ! ずいぶんと手の込んだことをしてくれたじゃないか。騎士爵殿!」
カブリュの全身は重度の火傷と刺し傷によって真っ赤に染まっていた。早急に治療を施さなければ、命を落とすくらいに。
だが――。
GAAAッ!
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