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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
人狩りの夜 後日譚
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いている。あせらず、目立たず、ごく自然にオルランドを、フェジテから離れなくてはいけない。
 【リムーブ・カース】ならレザリア王国でもできる。
 カブリュ・バドール伯爵は予定通り、翌日早朝。多数の護衛とともにオルランドを出立した。





 わずかな草木と岩ばかりの荒野を獣の群れが疾駆する。

「ぐあぁぁぁっ!?」

 足首を噛まれ、引きずり倒された男の喉笛に獣の牙が食い込む。
 
 獣――シャドウ・ウルフ。
 鋭い牙と爪、熾火のように光る目、夜闇に溶ける影のような漆黒の毛並みを持つ狼型の魔獣。その狩猟行動は獰猛惨烈で大型の野牛すら餌食にし、ときに熊や虎をも集団で狩り殺す。レザリア王国の辺境を旅するカブリュ・バドール伯爵の一行はシャドウ・ウルフの群れに襲われた。
 多い。
 実に五〇匹近い数だ。
 大陸でも街道をはずれた僻地や森の奥で不運な旅人が遭遇することのある魔獣だが、一度にこれほどの数の群れに遭うことはないだろう。
 せいぜい一〇匹前後といったところだ。
 それが、この数である。
 広大なレザリア王国の辺境は、アルザーノ帝国の辺境のそれよりも、遥かに広く、深く、闇が支配している。人の手のおよばぬ魔境が広がっていた。
 八人いる護衛が、ひとり。またひとりと、魔獣の顎に捕らわれ、餌食となる。
 そんな酸鼻を極める惨状を、酔いしれたように見つめるカブリュの姿があった。

「人が、獣に喰われる! 弱肉強食! グゥゥゥレィィィトゥゥゥハンティーングッ!!!! 野性の脅威の前には文明人など無力! なんという無慈悲な光景か、なんという無残な顛末か、このヴァドール伯カブリュ感嘆の極み! 人が生きるか死ぬかの瀬戸際こそ、最高のドラマ! これだから旅はやめられない、これこそ創作意欲をかき立てられる源泉!」

 この男は、人の死を楽しんでいた。
 この男は、人の死によってでしか、おのれの創作欲をみなぎらせることができない。
 そのために、創作の贄とするためにわざと必要のない護衛を雇い、危険な旅路を選び、この惨劇を招いたのだ。
 最後の護衛が斃れ、鋭い牙と爪で生きたままはらわたを引きずり出され、貪り喰われる――。
 残った獲物は、ただひとり。

 GRURURUruru――。
 
 気の弱い者が聞いたら失神してしまいそうな恐ろしいうなり声を上げて、カブリュの周囲を取り囲む。
 だが、なかなか襲いかからない。
 カブリュがまったく恐れを抱いていないからだ。
 シャドウ・ウルフには恐怖察知という魔獣ならではの能力があり、恐怖心の有無によって対象を襲撃するかを決める習性を持つ。
 そのことがシャドウ・ウルフたちを逡巡させた。

「ああ、楽しかった。大自然の脅威を目の当たりにできて、ほんとうに良い体験が
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