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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
人狩りの夜 後日譚
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きた者のみが身につけられる実戦闘法! 訓練場では絶対に習得できぬ修羅の業! 今までに幾人の人をその手で殺めてきたんだい」
「……」
「いいや、答えなくてけっこう。そんなこと、おぼえていないだろう。人が『生きる』ために食べたパンの数なんて、わざわざ記憶してなんかしていないだろうしね。そんなことよりも、君のその力と技だよ。マンティコアの毒針をかいくぐると同時に首をはねた神速。ストーンカの硬皮を貫いた怪力。バジリスクの返り血を巧みに避ける技巧。まさに達人! このヴァドール伯カブリュ感嘆の極み!」
「……」
「ふっふふふ、なぁ、どうだい。殺した数をすべておぼえていなくても、印象に残った相手のことはおぼえているだろう? どんな相手とのどんな死合いが一番楽しめたか、教えてくれないか?」 
「……離別の憂いを苦い酒で飲み干す」
「……誰のために生きるのだろう」
「静かな夜はいつまで続くのか」
「忠義のため我が命を捧げよう」
「銀の鎧をまとい戦に身を投じる」
「血を流すのは天下泰平のため」
「覇を競わず欺くこともせず」
「「真の英雄はなにも恐れない、英雄が悔やむことはない」」

 これは、カブリュ・ヴァドール伯爵の詠んだ詩の一節だ。

「俺が昂るのは悪人を誅するときのみ。悪人とは権力(ちから)暴力(ちから)で無辜の民草を虐げる者。ヴァドール伯爵、昨夜のあなたたちがまさにそうだ」
「殺すつもりかい? たしかに今ならその長い鍼で心臓をプスリと刺せばイチコロだ」
「そうしようとも考えていましたが、やはりあなたの詩才は惜しい。たった今あなたの詩を吟じて改めてそう思いました」
「才能に免じてゆるしてくれるのかな」
「それは、あなた次第です。実は鍼を通してあなたの体に呪を注ぎ込みました」
「なっ!?」
「あなたが『次』に暴力と殺戮に興じれば、『それ』はあなた自身を苦しめ、滅ぼすことでしょう。暴力ではなく芸術に生きてくれることを望みます。……ああ、残念だ。実に残念だ。カブリュ・ヴァドールという人物が、血ではなく酒で詩想を湧かせる李白や杜甫のような人であったら良かったのに。そうすればこのような外法の業をもちいることもなかったのに――」

 秋芳の声は徐々にすぼまり、遠くから聞こえ、科白の後半は聞き取れなかった。
 いつの間にか開け放たれた窓からの風がカーテンをゆらしている。

「……ブラフ(はったり)だ」

 呪文を唱えたそぶりはなかった。【カース】などかけられようがない。
 だが――。
鍼 を刺すとき、小言でなにかつぶやいていたような気がする。あれは、ルーンだったのだろうか? ひそかに呪文を、魔術を行使していたとしたら――。
 ほんとうに【カース】がかけられていたとしても、自力で解呪している時間はなかった。
 特務分室が動
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