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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
人狩りの夜 後日譚
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を刺す秋芳の姿があった。

「ううむ、これぞ妙技……、なにやら筋肉がほぐされ、身体中のこりがなくなっていくようだ」

 彼は明日からの長旅に備えて秋芳に鍼灸を頼んだのだ。

「ところで頭が痛いのになぜ脚に鍼をするんだい?」
「頭が痛いからと頭を直に治す……。急を要する場合はそれでもいいでしょう。しかしそれは拙速というもの。頭は五臓の血、六腑の気がすべて集まる大事な場所、重要な器官。なので五臓の血を巡らせ六腑を解毒することで根源的な治療を施すのが最上。巧遅は拙速に如かずという言葉がありますが、それも時と場合によりけり」
「騎士爵殿の国の医学は実に興味深い。できればいつか東方諸国を巡ってみたいものだ」
「今回の旅はまたずいぶんと遠出になるそうですね」
「ああ、セルフォード大陸の果ての果て。レザリア王国の版図である遥かな異境、風と炎の砂漠を越えた先にある幻の都を目指すのさ」
「なるほど。さすがにそこまで遠くへ行けば、特務分室の追っ手からも逃れそうですか、マスク・オブ・イーグル卿」
「――ッ!」
「兵は迫り来て衣は血に染まり、混沌の中あなたと視線を交わす。蹄の音は響き心千々に乱れる。なぜ先のことはわからないのか。聞かず問わず心の葛藤も忍ばず」
「それは、私の詠んだ詩だ」
「心に響く、良い詩です。このような詩を創れる人が、なぜ無抵抗な人々を虐殺するのです。ボルカン人を惨たらしくいたぶり殺すのです」
「……そうか、あの時ペルルノワールとともにいた鴉仮面の男は君か。ふふふ、強い強いとは思っていたが、まさかかの騎士爵殿だったとはね。悪魔殺し、シーホークの救世主の名は伊達ではなかったということか」
「クェイド侯爵はすでに縛につきました。ライスフェルト・ズンプフ侯爵は民衆の手で処断され、マンティス卿をはじめとする暴虐貴族の面々も遠からず、特務分室の手により捕まり、裁きを受けることでしょう」
「…………」
「さっきの質問ですが、なぜです? なぜあのような良き詩を創れるあなたが、残酷な遊興に耽るのです」
「人の死ほどに、興を掻き立てるものはないからさ。生々しい生と無慈悲な死。人の生き死にを目の当たりにしなければ、詩想がわかないのだよ。命がけの戦い、生死をかけた決闘、死にもの狂いの闘争……。そのような真剣勝負は技量にかかわらず良いものだ。決する瞬間にたがいの道程が花火の様に咲いて散る。まさに浪漫!」
「あなたは人の死に悦びをおぼえ、それを糧にして詩才を得ていたというのか……」
「それがなにか問題でも? 君とて人の死を糧にして今の強さを手に入れたのではないかい、敵の命を奪うことに悦びを感じていないのかい、カモ・アキヨシ。合成魔獣どもを屠ったあの動きは幾度も死線をくぐり抜けた者にしかできない強者の動きだった。生きるか死ぬかの殺し合いに勝ち残って
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