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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
人狩りの夜 後日譚
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 与える人間が、与えられる人間よりも下になることは絶対にない。
 与える側の人たちは常に自分たちが上の階層であると意識し、与えられる人たちは自分たちは絶対に這い上がれない階層であるとあきらめる――。

「物乞いの人生が板につき、抜け出せなくなる、と言うのね」
「そうだ。施されるというのは、自分が相手よりも下であるという意識を刷り込む行為でもある。上から目線の押しつけがましい弱者救済政策の欠点だな」
「ではどうしろと? なにか改善案があるのかしら」
「浮浪し、正業を持たない無宿人や就職の困難な軽犯罪者らを集めた授産更正施設の設立だ。建築や製造などの、手工業に従事して技術を習得させる。賃金もきちんと支払い、自立の道をうながす。国が住職先を工面してやるんだ」
「……クェイド侯爵の甘言に乗せられた人たちは職を求めていたわ。犯罪に手を染めることなく、きちんとした仕事を。彼らに安全な仕事を紹介してあげられる」
「そうだ。それにくわえて教育だ。図書館は学者や魔術師といった知識層だけのためにあってはいけない。言葉が苦手な外国人、健康に不安を抱える高齢者、文字の読み書きが苦手な人々。様々な事情を抱えた人達が文化を学び、味わうのに役立つ施設であるべきだ。移民や貧民のなかには家で落ち着いて勉強できる部屋のない子どもたちがほとんどだろう。本がある落ち着いた環境で勉強できることが必要なんだ。図書館はもっと敷居を下げて一般に開放するべきだろう」
「帝国公用語以外にも、様々な国の言語を訳した書物が充実すれば、他文化の共生を目指すアルザーノ帝国の姿をよりいっそうアピールできるでしょうね。母国語と多種多様な外国語、双方を重んじれば結果として国民の文化的素養も上がるわ」
「そのとおり。さすがレニリア姫は聡明だ」
「その意見。カモ・アキヨシ騎士爵からの上奏として、わたしから女王陛下に伝えておくわ。……お母様のことだから、きっと喜んでその提案を採用することでしょう」
「アイディア料は出るのかな?」
「……『黄金の小鳩亭』の割引券なら」
「せこい! 割引券て、せめてお食事券とかにならんのか」
「このわたしが私財を投じてお礼をしようというのよ、感謝なさい。あそこのキドニーパイは絶品なんだから」
「おれはシェパーズパイのほうが好きだな」
「それなら『鉄の旋律亭』の割引券を――」
「また割引券か!」
「なによ、じゃあ馬を贈るから乗馬について今夜学んだことを復習しなさい」
「いきなり馬かよ! 割引券から飛躍しすぎだろ」
「なら、なんならいいのよ!」

 後日、馬と割引券の間を取ってオルランド〜フェジテ間で使える馬車の乗車券が秋芳のもとに届けられるのであった――。





 ホテル 『ゴールデンシープ』の一室。カブリュ・ヴァドール伯爵の背中に鍼
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