第4話 勇者・動く死体
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が、何とか踏みとどまり 軈て虚空をじっと見つめながら固まった。
憐れな男、と思えなくもないが これは先程にもあった通り自業自得の結果だ。この勇者は、以前のアリオスとは絶対的に違う面がある。それは喜々として人を殺し過ぎた所にあった。恐らくは歴代の勇者の中でも一番人間を殺してきただろう。あのLP時代の戦争時のアリオスの行為が可愛く見える程に。
「……おや? 少し席を外していましたが、珍しい来客ですね」
そして、勇者は1人ではない。いつの時代にも勇者の傍には従者がいる。先程までは見当たらなかったが、言葉で言う様に理由は判らないが、席を外して洞窟の奥へといっていた様だ。
「……あぁ。お前もいたな。確か」
ゾロは ゲイマルクに向けていた視線を、その傍にまで戻ってきた小柄な少年? に向けた。
「ええ。そーです。私は勇者の従者をしてますからね。傍にいるのが常ですよ」
「の割にはさっきまではいなかったみたいだが?」
「少々用を足していたので。人間の体と言うのは少々不便な所がある、と言うところですね」
淡々とした会話なのだが、その周囲に放たれる異様な圧力はゲイマルクのそれを遥かに凌駕している。
「それで、世界の英雄さんがこの様な場所に何しに来たんですか? えーと、マスクマン? でしたっけ?」
「あぁ ただの傍観だ。魔の気配が色濃くなってきた。……そろそろ お前達がうろつくと思っていたが、案の定。そんな姿になって、死にたがっていてもまだ、魔の気配にはつられるらしい。……いや、魔王に殺されたい、とでも考えているのか」
「おー、鋭い読みですね。多分ですが、後者でしょう。動く死体状態の勇者になって殆ど意識は無いと思ってたんですけど、2人の会話みたいなのを訊いて改めましたよ。いやぁ可哀想ですね。きっと今も全身に激痛、痒みが襲ってるでしょうし」
口では可哀想、と言っているのだが、従者の表情のそれはまるで違った。人間では浮かべられるとは思えない程邪悪な笑みを浮かべていた。
だが、それに動じる様子なく、ゾロは淡々と訊いた。
「お前はどうなんだ? 自分が可哀想とは思ってないのか?」
「……はい? 何故私が可哀想なんですか? この通り、身体は大丈夫そうでしょう? 裸にはなったりしませんよ?」
軽いジョークのつもりで言って笑っているのだが、嫌悪感しかそこからは生まれない。
「いや、私が言っているのはそこではない。ただの下っ端とは言え、お前が完全に堕落した現在の状況を、と聞いている」
「…………」
邪悪な笑み……だったのだが、それは完全に消え失せた。
《笑み》から《怒り》の表情へと。
「……随分と懐かしいセリフですね。数年前に会った時 もしやとは思っていまし
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