第4話 勇者・動く死体
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ゲイマルクに語り掛けるが まるで返事はしない。ただ、虚構を見つめつつそこに佇んでいるだけだった。
「あの時のお前を考えたら、今の姿は想像出来ないだろうな。かつてのお前の仲間も含めて」
返事はないがゾロは思い出す様にそのまま語り続ける。
それは勇者災害の時の事。
勇者に 与えられる武器エクスードソードの発動を促す為に人類を虐殺していった。
魔王を打倒する事を目的として引き起こした未曾有の災害。死滅率は%に現すと少ないと言えるが、それでも1個人が殺傷した数と考えれば、歴史に刻む程の凶悪な事件。先代勇者アリオスよりもさらに非道に徹し、必至に抵抗を見せる人類を大量に殺した。
更に女は犯した後に殺す。男はそのまま殺す。その所業はまさに災害。意思のある災害で性質が悪い事この上ないものだった。
ゲイマルクは、その志に共鳴した仲間達(同属の屑)と共に人類に牙を向け、虐殺を楽しむまでになったが、それは長くは続かなかった。
そう――目の前の男 ゾロが現れたからだ。
「正直に言えばあの時……私はまだ方針を固めてなかった。私自身が動くのか。ただ見守るだけなのか、色々と自問自答をしていた最中だった。……いわば、ゲイマルク。お前が私を動かしたんだ」
ゆっくりと歩を進める。ゲイマルクの方へと。
「如何に目的があったとしても、優先されるものがあったとしても。……目の前であの惨劇を引き起こそうものなら、すべき事は自ずと決まる。そして……」
ゲイマルクに一定距離近づいたその時だった。
「ぐごおおおおぷぴょーーーーっっ!!」
狂ったように奇声を発しながら、その姿からは想像がつかない程俊敏に、素早く手に持った錆びた剣を振り下ろしてきた。
その剣はゾロの頭部を唐竹割りしようとしていたが、ゾロの指先で止められる。
「それは呪い。お前が背負うべき呪い。……今のお前の全身を襲っている苦痛。お前が殺してきた者達からの、な。……いや罪、と言い換えた方が良いかもしれん」
「う、ご、ごご、ご…… こ、こ、こ……」
ぷるぷるぷる、と剣に力を込めているのか身体全体が震えていた。
そして、もう殆ど形を成していない顔の口の部分が何度も何度も動く。奇声ではなく、何かを伝える様に懸命に口を動かしていた。
「こ、こ……ころ……して……… く、れ」
懇願だった。死ねない呪いから解放してくれ、と。ゾロが言っていた言葉の意味を理解していないのだろう。今の苦しみは 自分がもたらした結果だという事を。殺してきた者たちから勇者へ送られる呪い。罪なのだという事を。
「…………」
ゾロはそれには答えず、ただ受け止めた剣を弾き返した。
ゲイマルクは よろけて倒れそうになる
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