MR編
百五十三話 王墓の死霊
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「…………」
砂漠の少し小高い砂丘の上、ピラミッドの全体が見える場所に、そのNPCは立っていた。褐色の肌に、簡素な布だけを纏った小柄なその少年は、ただただジッとピラミッドを見つめ、灼熱の砂漠にあってどう言う訳か寒気がするほどの静謐な空気を纏っていて、どことなく恐ろしさを感じるたたずまいでその場に立っている。
しかし、その頭上には間違いなくクエストの開始NPCである事を示す「?」のマークが浮いており、彼が目的のNPCである事を示している。
「さ、シリカちゃん」
「は、はい、あの!なにか、お困りですか!?」
「…………」
近づいていったシリカの問いに、少年は答えない。ただ彼女に気が付かなかった訳では無いらしく。一瞬シリカに視線を向けると、真っすぐにピラミッドを指さした。
「……死霊を鎮めて、この短剣の、本当の力を……」
「あ……」
それだけを言って、少年は指を下ろし、それ以上何も言わなくなる。シリカは少しだけ表示されたホロウィンドウを見ると、メンバーの元へと戻ってきた。
「どう?」
「クエストは受注できたみたいです。名前は……「王墓の死霊」ですね……」
「死霊……」
アスナが若干嫌そうな顔をしたのを目ざとく見つけて、リョウはニヤリと笑う。
「おやまぁ、騎士姫さんは相変わらずアストラル系がこえぇと見える」
「ちょっと!」
「え?アスナ、お化け嫌いなの?」
意外そうに聞いたユウキに、アスナは慌てて首を横に振る。
「え?う、うぅん、そんな事無いよ?全然平気ダヨ?」
「今更隠してもなぁ」
「ちょっと、もう、キリト君!!」
仲間内では既に周知の事実を今更隠そうとしたところで無駄ではなかろうか、と唸ったキリトの肩をバシンッと叩いて一度ため息をついたアスナはしかし、諦めたようにため息をついた。
「そーです!幽霊は、苦手なの!」
「お、認めるあたりは進歩だなァ」
「からかわないで!!」
「アスナ!」
いつも通りの流れでケラケラと笑いこけるリョウにジトッとした目を向けるアスナの手を、ユウキの両手がギュッと包み込んだ。
「え、えっと、ユウキ?」
「大丈夫だよ!ボクがアスナの事守るからね!」
「ゆ、ユウキ〜!ありがとう!!!」
感極まったように互いの手を掴んで見つめ合う二人の妖精、互いに美少女であるため見目麗しい姿なのだが、いかんせん背景が灼熱の砂漠ではそれもシュールさを増して見える。
「とりあえず、近くまで行ってみよっか!」
「はい!あの、皆さん大丈夫ですか!?」
「あぁ、了解」
「私も大丈夫……だけど……」
「おーう、お前ら二人の世界に入ってんじゃねぇよ、戻ってこーい」
小柄なケットシーを戦闘に羽ばたいていく七つの人影が遠ざかっていくのを、少年NPCのガラス球のような
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