巻ノ百三十三 堀埋めその二
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「このことは何があっても変わらぬからな」
「堀位は」
「別によいわ」
こう常高院に言った、常高院はその姉に文を渡した。だが茶々はそれを碌に読まずに大野を読んで言った。
「修理、これでよい」
「講和の条件はですか」
「うむ、わらわに異存はない」
大野にも笑って話した。
「だからじゃ、後はじゃ」
「常高院様にお願いしてですか」
「講和のこと承ったとな」
こう言えと言うのだった、大野に文を渡して。
だが大野はその文を受け取るとすぐに諸将を集めその文を共に読んだ、するとどの者も怪しいと思って言った。
「惣構えの埋め立てですか」
「普通ならばこの城なら三の丸の堀となりますが」
「外堀ですな」
「それ位ですが」
「しかし文字通りに読めば」
その惣構えをというのだ。
「堀全てでは」
「そして堀を埋めると壁も石垣も櫓もです」
「無論門も」
「全部壊すことになりますが」
「そうなりますが」
「そうなっては」
それこそというのだ。
「何にもなりませんぞ」
「如何に大坂城といえど裸になれば」
「堀も壁も石垣も何もないと」
「お話になりませぬぞ」
「これはです」
幸村は大野に言った。
「おそらくですが」
「仕掛けているか」
「はい、惣構えとありますが」
「三の丸の堀だけでなく」
「まさに全ての堀、そして」
「壁も石垣も門も櫓もか」
「無論真田丸もです」
今幸村が篭っているそこもというのだ。
「まさに城の何もかもをです」
「壊してか」
「城を完全に裸にし」
「我等が何も出来ない様にする為か」
「その為の仕掛けですぞ」
「そもそも講和もなりませぬぞ」
後藤も大野に言って来た。
「今の状況での講和はまさに幕府の思う壺で」
「そしてこの文のことも」
「このまま受けてしまえば」
「まさに幕府の思う壺と」
「そうとしか思えませぬ」
「後藤殿の言われる通りです」
譜代衆の中から木村が言ってきた。
「修理殿、この文はそれがしから見ましても」
「仕掛けであってか」
「はい、今迂闊に受ければ」
「城の何もかもがか」
「なくなりまさに大坂の城はです」
この天下の名城がというのだ。
「見る影もない無様な裸城となりますぞ」
「講和なぞひっくり返しましょうぞ」
毛利は諸将が思っていることをそのまま言った。
「戦自体を続けるべきです」
「兄上、何故講和ですか」
治房は他の者達より強く言った。
「そもそも、ましてやこの文を受ければ」
「天下の笑い物ですぞ」
兄に続いてだ、治胤も言ってきた。
「それ位なら派手に戦ってやりましょうぞ」
「その分が遙かにいいですぞ」
長曾我部も大野に強く言う。
「こんなもの飲んではなりませぬ」
「これを飲めば負
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