第84話 何時の時代も上司には苦労させられる その2
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ない。
「さぁ、どんどん食べて下さい。おかわりも有りますよ」
「え? これ・・・全部食べなきゃ・・・駄目?」
「どうぞ、お粥は温かい内が美味だと味見した時に知りましたから」
つまり、シュテルはあの七色ヘルソース入りのお粥を食った事になるのか。
となれば、考えたくはないのだがシュテルの味覚は多分絶望的に一般人とはかけ離れた位置にあるのかも知れない。
「くそっ・・・こうなりゃ毒を食らわば何とやらだ!」
覚悟を決め、銀時はお粥を一息に平らげた。そして、思わずリバースしそうになるのを必死に口を両手で抑えつけて我慢する。
銀時の顔が七色に変色していく。最初は赤い色からそれに続いて青、緑、黄色、茶色、紫、灰色。
それらの色へと変わった後に、元の色へと戻っていく。
「ぶはっ!! く・・・食った・・・食ったぞ!!」
「お粗末様です。お父様・・・はい、おかわりを持ってきましたよ」
其処には何時頃用意したのか、巨大な寸胴鍋一杯に並々と作られたお粥(七色ヘルソース込み)が銀時の目の前に姿を現す。
それを見た銀時の顔が蒼白色へと変色し、目元には隈が出来上がり、その瞳はどんよりと濁っていき、その顔や体全体から絶望のオーラが漂いだす。
しかも、逃げられないようにと目の前でシュテルがとても輝いた目でこちらを見ている。
小さい子供が自分の作った料理を親に食べて貰って美味しいと言って欲しそうなそんな類の目だった。
そんな目をした子供の前で「こんな物食えるかぁっ!」と言って料理をひっくり返そうものなら一生もののトラウマを植え付ける事になりかねない。
だが、今銀時の目の前に置かれているのは業務用の巨大な寸胴鍋に並々と盛られた七色ヘルソース込みお粥が銀時の行く手を阻んでいる。
これを食べなければ明日を迎える事は出来ない。
「ぐうぅぅぅぅぅぅうおおぉぉぉぉぉぉぉ―――――!!!」
最早怒号なのか、はたまた絶叫なのか、それとも断末魔の悲鳴なのか。とにかく判別し辛い奇声を挙げながら銀時は寸胴鍋に頭を突っ込み、そしてお粥を口に含み、大して噛みもせずに胃袋の中へと押し込んでいく。
決して舌の上に少しでも触れさせないように口に入れては呑み込んで胃の中に押し込む。
それをひたすら繰り返し続けるその光景をシュテルはとても楽しそうに、そして嬉しそうに眺めていた。
しかし、そんなシュテルにもまた試練の時が迫ってきていた。
「な〜〜のは〜〜」
「な〜のはちゃ〜〜ん」
何処か気の抜けた声と共に全く無防備なシュテルに向かいフェイトとはやての二人が同時に飛び掛かって来た。
二人の接近に全く気付いていなかったシュテルは二人の熱烈タックルを諸に食らう羽目になってしまった。
「ぐふうっっ!!」
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