第3話 初めての仲間と異界の魔女
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田君は置いて行かれない様に頑張って立ち上がって付いていく。
エールも本気でおいていこうとしたワケじゃないから、比較的早く長田君は追いついて冒険を再開した。そして、さっきのやり取りなど忘れた様に普通に話しかける。
「そー言えばよぉ。さっき聞きそびれたけどエールって基本は結構出来てたよね。テントの設営とかも手慣れてたし、案外旅慣れてたりする?」
「ん? そう言う訳でも……。今回が初めての冒険だし」
「へ? マジ?? 今回が初めて?」
「うん。ずっと前から訓練は受けてたから。だからあのくらいなら大丈夫だよ。うん。1人で」
「ちょーーっ! さらっとオレいらねー、みたいに言わないで!」
長田君は時折あるエールの辛辣コメントに何度も何度も過剰に反応する。傍から見れば面白いかもしれないけど、ちょっと辟易するかもしれない。
「(うぅーん。色々コメントキッツイけど、何だかんだで優しいし、行き倒れてたオレに弁当くれるなんて 神ってるし……。あれ? これって虐待じゃね? 親に訳の分からない虐待を受けてるんじゃね? 魔王討伐とか、それが証拠じゃね? ……マジ許せねぇ親だぜ!)」
長田君の中で色々繋がったらしく、どれだけ辛辣で辛口なコメントを貰ってもエールについていく、と気を新たに持った。
「よーし! ならよ! 冒険ならオレの方が結構先輩だからよ。なんでも教えてやんよ! オレ達親友で、ベストフレンドじゃん? これくらい当然だって。ハニー界の絶世のハンサム男長田、命かけるぜ!」
ぐっ、と親指を突き立てた(様に見える)手を向ける長田君。
「んー……」
エールは 肩にかけてた冒険者バッグの中をごそごそと漁り、蜜柑を取り出した。母親がデザートに、と言う事で渡してくれたものだ。
「はい、これ」
長田君にそれを渡し……ではなく、長田君の頭にひょいとそれを乗せた。ハニーは元々陶器で出来ていて 物を乗せるのは少々難しいが、何故か長田君の頭には髪の毛がふさふさしててバランスよく乗せるのは問題なかった。……なぜ乗せたのかは判らないが。
「ちょっ!? なんで蜜柑!? なんで乗せたー!? あ、て、手が届かないっっ! おりゃ、ちょっ、くぅっ……!」
数分の格闘の末、なんとか長田君は頭の上から蜜柑をどかす事に成功。短い手足だから非常に難しかったらしい。振り落とそうとすれば、自分がすッ転んで割れてしまいそうだから、それも出来なかったみたいだ。
「はぁ、はぁ…… えー…… この子意味判らない……。最近の若者怖いわー……」
「うーん。なんで乗せたのかな?」
「いや、それ、オレが聞きたいって!」
何だかんだで、生まれて初めて出来た仲間の長田君。少しだけど仲良くなれた気がしたエールだった。
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