68部分:第十一話 おてふりその一
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第十一話 おてふりその一
おてふり
登校する時としてから少しあれこれクラスメイトと話したおてふりですが。これはそれ専用の教室ではっぴを着てやります。ですから学校でもはっぴを着ている子はちらほらといます。
授業自体はかなり差の出るものです。知っている子はかなり知っていますがそうでない子は全然なので。特に自宅生で高校から入っている子はかなり戸惑っていたりします。
「ここがこうなるの?」
「そう、それでね」
授業の前の休み時間に聞いてくる娘がいたので教えてあげます。この娘はその高校から入った娘です。
「ここをこうするのよ」
「何か全然わからないわ」
「最初はね。困る人多いのよ」
困惑した顔になるその娘に言います。ちなみにおてふり教室は畳です。ですから皆靴を脱いで休む時は座って休みます。そうした教室です。
「慣れていないから」
「そうなんだ」
「慣れるしかないのよね、実際のところ」
私はこうも彼女に言いました。
「数やってね」
「何か大変そう」
「大変なのは大変ね」
これははっきりと言うしかありませんでした。
「十二下りまであるしね」
「そんなにあるの」
「ええ、そうなのよ」
どうやらそれも知らないみたいです。私みたいに教会でずっと育ってきている娘には常識なことも他の娘にはそうでないんです。これは子供の頃からわかっていたことですけれどここではそれを特に実感します。
「だから数やって覚えるしかないのよ」
「大変そう」
「まあ人に合わせて踊ってもいいし」
これ重要です。ておどりは皆でします。男三人女三人です。合わせて踊るのが大事なんです。早過ぎても遅過ぎても駄目なんです。
「その辺りは見ながらでもいいわ」
「見ながらでないとできないわよ」
「それでいいのよ」
こう言ってあげました。
「それこそが大事なんだから。いいわね」
「何となくわかったようなわからないような」
「そういうものよ」
彼女にまた言いました。
「ておどりって。一度にはわからないのよ」
「やっぱり数やるしかないのね」
「そういうこと。私だって子供の頃からやっていたから」
「子供の頃から?あっ、そうか」
彼女はそれを言われて気付いたようでした。
「教会の娘さんだったわよね」
「そうなのよ」
「何かそれって凄い特別な感じね」
彼女は私に言いました。
「教会の娘さんって」
「そうかしら」
私には実感がないんで。そう言われてもよくわかりません。
「私家が魚屋でしょ。そういうのないから」
「ふうん」
「お魚持ってておどりってないじゃない」
「それはちょっとね」
想像がつかないです。天理教ではよく出て来るのは農作業や大工仕事にちなんだ言葉です。
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