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レーヴァティン
第五十話 今度は南へその一
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                第五十話  今度は南へ
 久志は居酒屋で飲み食いをしつつ仲間達が娼館から戻って来るのを待っていた、そしてビールでかなり出来上がった時にだ。
 彼等が一人また一人と来た、その誰もが脂っ気が抜けてしかも楽しい思いをした顔で意気揚々と戻ってきた。
 その彼等にだ、久志はその酔っている顔で尋ねた。
「それでどうだったんだ?」
「情報のことだよな」
 正は席に着いてからビールを飲みつつ久志に言葉を返した。
「娼館で聞いた」
「ああ、お姉ちゃんのことじゃなくてな」
 勿論娼館にいる女達のことだ、ここで言うお姉ちゃんとは。
「そっちのことだよ」
「ミラノに行くか?」
 正は久志ににこりともせず言った。
「次はな」
「あれか、ミラノに凄い獣使いがいるってか」
「もう聞いてたんだな」
「俺もな」
 店で親父に言われたことをそのまま話した久志だった。
「市場にあったアクセサリーの店でな」
「そうだったんだな、そっちも」
「それでな」
 久志は正にさらに話した。
「川で行った方がいいみたいだな」
「川、船でだね」
 源三は自分の左手にあるフォークに猪のハムを刺していた、右手にはナイフがあってステーキの様に切って食べるつもりなのだ。
「あそこまで行くんだね」
「そっちの方が安全でな」
「しかも速く行ける」
「そう言われたんだよ、市場でな」
「そうだね、はぐれることもないしね」
 一つの船に全員乗ればとだ、源三は久志に応えて言った。
「船ならね」
「いいだろ」
「そうだね」
「馬や驢馬達も船に乗せて」
 順一は彼等のことも忘れていなかった。
「そうしてですね」
「ああ、ミラノまでな」
「船で行く」
「そうしないか?」
 久志はあらためて仲間達に尋ねた。
「ここは」
「その方がいいですね」
 順一は源三に続いて賛成の意を述べた。
「あちらまでなら」
「そうだよな」
「ではこのコペンハーゲンから」
「次はミラノでな」
「船に乗ってそのうえで」
「行くか」
「そうだね」
 剛も言ってきた、大きな熊のベーコンをその見事な顎で食い千切りそのうえで食べつつ。
「じゃあ次は南だね」
「ミラノでな」
「面白そうだしね」
「あそこは行ったことがあるでござるが」
 進太はこう言った、彼はザワークラフトを食べている。一同はこちらもふんだんに食べていて卓の上に山盛りで置かれている。
「いい場所でござる」
「いい街か」
「はい」
 進太は久志に素直な声で答えた。
「実に」
「それじゃあな」
「ミラノ自体もござるな」
「楽しみにして行くか」
「食べものも美味しいでござるよ」
「そうなんだな」
「名物はパスタでござる」
 この料理だというのだ。

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