第2話 旅立ちの朝はあちこちが痛い
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続けた。
「エール。貴方はまだ自分の力が心配……と思っているかもしれませんが、それならば大丈夫です。貴方は私がみっちり鍛えてきました。これまでの事を思い返してください。もう一流の冒険者と比べても遜色ない実力がありますよ。後は実戦あるのみです。冒険を経て鍛えるのが一番良いでしょう」
エールは思い出す。
確かに、母には物心ついた頃から鍛えられた記憶がある。
神異変があり、新たに神魔法を覚えるのは不可能……と説明されたのにも関わらず、母は神魔法を教えてくれて、使える様にもなった。神異変の事情をエールも習っているから知っていた。なのにも関わらず神魔法を覚える事が出来た時には 頭の中に《?》がいくつも浮かんだのだが、母は笑っていた。
『これが母の力です。ばばーん』
と得意げにそう言っていいながら。
エールは、子供ながら全く説得力ないなぁ、と少なからずため息が出たのは懐かしい思い出だ。
そんな思い出に浸って現実逃避……と言う訳にはいかなかった。
「さあ、冒険の餞別です。受け取りなさい」
母はどこからか取り出した袋を差し出した。
その中には 大きな財布と食料が入っていた。これなら暫くの間、生活には困らないとは思う。此処まで備蓄があった事に少なからず驚きもあった。
「さて、こちらは誕生日プレゼントです」
次に渡されたのは ひのきの棒と冒険者の服。
何か、いつかもっと幼い時に読み聞かせてくれた冒険ものの絵本の内容に似てる餞別だ……、と言うのが最初の感想。そして次は『誕生日のプレゼントなら、もうちょっと良いものを……』と愚痴が喉から出かかっていた。これなら去年のプレゼントの方が全然良いから。
そんな息子の想いを他所に、母は続ける。
「これで冒険の準備は万端ですね。……さて、次はこの世界についてです。今の状況、エールも判っていますね?」
自分を置いてどんどん進んでいってる気がする母を見て、少し足止めならぬ、悪戯してやろう、と思ったエールは。
「うん。そうだね。最近はとっても不景気だよね。昨日のお買い物のとき、野菜の値段上がってたよ」
「はい。その通りです。それに今日は小麦の値段がまた上がりましたよ。家計に大打撃ですね…………」
悪戯を悪戯と思ってくれてない? と母の顔をマジマジと見つめたエール。
そんなエールのオデコにぴんっ! と指を弾く母。
「って、違いますよ。ぺしっ」
勿論母は、芸にも厳しい面がある。ツッコミをそう簡単に忘れたりしないんだから。
「魔王ランスの存在です。いずれ、この世界を破壊するであろう魔王ランスを貴方が倒すのです」
まさにファンタジーだ。
絵本の世界だ。
子供にいきなり魔王討伐とは、母もヤキが回った
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