第2話 旅立ちの朝はあちこちが痛い
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いよ……。うんとても」
「ふふ。そのようですね。では、顔を洗ったら下に降りてきてください。母からとても大事な話があります」
パタパタ、と小走りで部屋を出ていく母を見送るエール。大事な話……とは? と疑問に思ったが、直ぐに判る事だと楽観視し、身体を完全に起こした。まずは洗面所に向かい眠気、寝癖と共に全部冷水で洗い流す。ひんやりとした冷水は寝起きには気持ちよく、更にふかふかの干しタオルは母が容易してくれていたもので、太陽の香りがして更に心地良い。
自分の誕生日の朝。いつもとは違い 少しだけ特別な感じがする……とエールは思いながらダイニングへと向かった。
そこには母が作ってくれた朝ご飯の良い香りが鼻孔を擽ってきた。朝からとても豪勢な食事。これが誕生日だから……だとは思うけれど。
「……(朝から、この量はきついかも)」
美味しい匂い、食欲を誘う香り、それらを感じつつも一番思ったのはそこだった。
それでも母の料理はとても美味しい。確かに全部入れるのは大変かもしれないが、今エールのお腹は空っぽだ。だから 感想は兎も角身体は素直だった。 くーっ と言うお腹の虫が鳴り響いたから。
「おや、少し作り過ぎたかと思いましたが育ち盛りにはこれくらいが丁度良かったですね。さぁ、冷めない内に召し上がれ」
母に促され、エールは直ぐに食事に手をつけた。
まずは、母のスープを口にする。程よく感じる香りは母が育ててくれている香草の香りだろう。ずずっ、とゆっくりと口の中に含み、舌で味を楽しみながら胃の中へ注ぐ。
そして へんでろぱを口にする。とても美味しい……と頬を緩ませた。
「……………ふふ」
自分の子供が次から次へと食べ物を美味しそうに口に運ぶ姿を見て満足そうに眺めるクルック―。 そんないつもよりちょっぴり豪勢な朝食の最中、突然切り出した。
「あ、そうそうエール。今日から貴方には冒険に出てもらいます」
「………え?」
そう……、まるで簡単なおつかいを頼むかの様に、本当に簡単に。
ごくごく簡単に……無茶なことを言った気がした。
「おや、なんですか? その顔は」
「え、えっと……訊き間違い、じゃないよね? お母さん。八百屋さんに行ってください、とかじゃないよね?」
「違いますよ。おつかいは先日全て済ませています。エールも一緒に行ったでしょう?」
「う、うん……。えと、やっぱり聞き間違いじゃないんだ……。ぼ、ぼーけん? いきなり過ぎて、ちょっと考えが……」
「そうですね。言ってませんでしたから、それも仕方ないと思います」
仕方ない、と言いつつも否定をしたり訂正したりするつもりは全くない様だ。母の顔を見ればそれくらいは判るから。母は穏やかな表情ではあるものの真剣な眼でエールを見ながら
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