暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ百三十二 講和その十

[8]前話 [2]次話
「やはりな」
「はい、戦を続ければ」
「そうするしかないということか」
「そうかと」
「わかった、ではじゃ」
「大坂を出ずあくまで戦おうとうするならば」
「あの者達に花をやれ」
 武士のそれをというのだ。
「最高に華々しいものをな」
「そして我等も」
「無論じゃ、お主もわかっておろう」
「それがし三河武士でござる」
 これが大久保の返事だった、強いものだった。
「ならばでござる」
「そうじゃな、戦の場ではな」
「敵も味方も両方がでござる」
「花を手に入れる、だからじゃ」
「拙者も見事です」
「花を手に入れてみせるか」
「そう致します」
 こう家康に言った、もっと言えば言い切った。
「大御所様に敵の将達の首を持って来ましょうぞ」
「ははは、お主は変わらぬのう」
「槍一筋故」
 この考えが変わらないからだというのだ。
「それがし戦の場に生きそして」
「戦の場で死ぬか」
「それが本望です」
「三河武士としてじゃな」
「左様でありまする」
「そうか、しかし三河武士も変わってきたわ」
 家康は大久保の言葉を受けてここで少し遠い目になった、彼がこれまで戦ってきた数々の戦のことを思ってだ。
「四天王、十二神将とおってな」
「当家には」
「どの者も生真面目な武の者達でな」
 それでというのだ。
「槍働きを第一としておったな」
「左様でしたな、どの方も」
「田舎者ばかりで茶も雅も何もじゃ」
「知りませんでしたな」
「そうであった、三河の田舎で肩を寄せ合って暮らしておったな」
 当時の三河者達はというのだ、家康にとっては若き日々だ。
「岡崎でも浜松でも」
「左様でしたな」
「皆な、誰もが戦の場では命を賭けて戦ったわ」
 三方ヶ原では家康の為に多くの者が倒れている、家康は彼等のことを忘れたことは一度たりともにあ。
「不器用じゃが率直で飾らぬな」
「武辺者ばかりでしたな」
「傾きもせずな」
 そうした派手さとも無縁であった。
「しかしそれがじゃ」
「今はですな」
「江戸も徐々に開かれてきてじゃ」
「三河の趣も」
「次第に薄くなってきておるわ」
 それが今の徳川家だというのだ。
「幕府を開いてな」
「四天王も今は亡く」
 四人共だ、家康を支えた彼等も。
「そして十二神将もな」
「殆どですな」
「残っておらぬ、もう三河武士も色褪せてきたか」
「しかしわしはです」
「黄色の具足に旗にじゃな」
「この陣羽織です」
 黄色、徳川のそれだというのだ。
「これを着ております故」
「陣羽織に誓ってじゃな」
「思う存分戦い」
 そうしてというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ