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真田十勇士
巻ノ百三十二 講和その八

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「わしはあの御仁の首なぞはじゃ」
「見たくありませぬな」
「そうじゃ」
 こうはっきりと言った。
「おそらく責は大野修理が全部受けてじゃ」
「そしてですな」
「腹を切ることになるであろうが」
「いざという時は」
「それでもじゃ」
「右大臣殿はですな」
「右大臣の地位は高い」
 その官位の高さからも言うのだった。
「そこまでの地位の御仁に無礼は出来ぬな」
「はい、とても」
 正純も官位のことは熟知している、それでこう家康に応えた・
「その様なことは」
「出来ぬな、何しろ竹千代よりも高い」
 秀忠を見ての言葉だ、内大臣である彼を。
「それならばじゃ」
「無礼のない様にですな」
「せねばならぬ、だからじゃ」
「そのことからもですな」
「命はよい」
「では最悪でも」
「少し高野山に入ってもらうやも知れぬが」
 それでもというのだ。
「首はいらぬ」
「左様ですか」
「腹を切ってもらうこともない」
「修理殿のことだけで」
「済ませたい、あと諸将もな」
 その彼等もというのだ。
「立派な者達が揃っておるからな」
「出来れば幕府で、ですな」
「召し抱えたいがのう」
 彼等もというのだ。
「そう思うが」
「ではここで、ですな」
「豊臣家が大坂を出ればこれ以上いいことはない」
 家康にしてもというのだ。
「それならな、後藤又兵衛なぞはな」
「埋もれさせておくのは惜しいですな」
「あの御仁にしても」
「やはり」
「浪人のままでは」
「大名として迎えたい」
 その格でというのだ、このことは後藤が黒田家の中では万石取りの身分であったことも影響している。
「そしてだ」
「他の御仁もですな」
「多くの者は幕府に迎えたい」
「そうお考えですな」
「うむ、流石に切支丹の者は無理じゃが」
 明石、彼はというのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「切支丹の者以外はですな」
「幕府としても召し抱えたい」
「そうお考えですな」
「あの長曾我部も今ならな」
 今講和して大坂を出ればというのだ。
「また大名に戻してじゃ」
「そうしてですな」
「そのうえで」
「召し抱えたい、確かに治の才能はないが」
 成り行きで西軍につきそして土佐に帰ってから家督を脅かしそうな兄を粛清したことで取り潰したことからだ、実は家康は関ヶ原だけならば長曾我部は許すつもりだったのだ。
「それでもな」
「その武は見事」
「だからですな」
「しかも中々よい大坂への入り方であった」
 このことも評価している家康だった。
「それでじゃ」
「長曾我部殿もですな」
「召し抱える」
「そうされますか」
「そう考えておる、そしてな」
 真田丸、そこを見ての言葉だった。
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