59部分:第九話 座りづとめその七
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第九話 座りづとめその七
「だから履かないの」
「そうなんだ。それにしてもさ」
「何?」
「上げ底靴のことよく知ってるよね」
・・・・・・またやっちゃいました。自分から言わなくていいことまで言っちゃいました。
「履いたことあるんだ」
「あるけれど。おかしい?」
「いや、別に」
その子はこのことには別に何も言いませんでした。
「僕はそうは思わないけれど」
「だったらそれでいいじゃない」
少し開き直って言葉を返しました。
「でしょ?だったら」
「まあね。けれど」
「何よ」
女の子達との話から少しムッとしているのが今も言葉に出ています。
「中村さんってそんなに背が気になるんだ」
「そうよ。御願いづとめはしていないけれど」
御願いづとめとは親神様教祖に何かを御願いする為にするおつとめです。十二下りまでする場合もありますが普通は座りづとめで済ませます。
「かなり切実なのよ」
「気にし過ぎじゃないの?」
あっけらかんとした声で言われました。
「それって」
「自分じゃないとわからないのよ」
こういうのって。そうですよね。
「わかる?それ」
「だってさ。この高校だけでもあれだよ」
礼拝堂の前で一礼して。それから中に入ります。中でも少し話が続きます。
「中村さんより小さい娘結構いるじゃない」
「その皆に追い抜かれそうなのよ」
これも本当のことです。縁起でもないです。
「わかる?伸びないのよ」
「それはまた」
「とにかく背のお話は終わり」
「何で?」
「私の席に来たからよ」
丁度私がいつも座る場所でした。ここまで来たら座るしかありません。
「じゃあ。話は後でね」
「教室で?」
「ええ、そこで御願い」
「わかったよ、それじゃあ」
「ええ」
こんな話のやり取りを最後にして自分の場所に座りました。そのまま正座です。座りづとめは足に問題がない限り正座でするのが決まりです。
そのまま暫く待っていると合図があって礼拝堂の中央に一礼します。そこにあるのはかんろだいと言います。親神様が世界をお創りになられた元の場所で陽気ぐらしが果たされたその時には上から甘露の水が降りてくると言われています。
そこに一礼してから頭を上げて座りづとめを行います。それが終わってまた一礼してそれから教祖殿と祖霊殿の方にも一礼して最後にまたかんろだいに一礼して終わりです。こうして天理高校の一日がはじまります。長いようであっという間です。
座りづとめ 完
2007・11・29
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